今回は、雪道の必需品~タイヤチェーン、中でも、保管も取り付けも手軽で、性能も飛躍的に向上している布製チェーンを取り上げます。
毎日「大雪」のニュースが報道番組で伝えられていて、クルマが雪に閉じ込められるなど影響や被害も甚大です。こうした雪道での「立ち往生」は、タイヤチェーンを備えていない車両のスタックが発端になるケースもあります。
※「Autosock」を入手したので追記しました。
実は数年前に自分も「立ち往生」に遭遇した経験があるので他人事とは思えません。
自分の経験なども交えながら、布製タイヤチェーンをチェックしてみます。
雪立ち往生で川崎~奈良まで15時間かかった経験
もう10年以上前の話しですが、1月後半に休みを取って川崎の自宅から関西の嫁実家まで帰省したことがありました。現地での足が欲しいので毎回クルマで約5時間ほどかけて帰省していました。
当時乗っていたのはエクストレイル(4WD)でしたが、年に1~2回しか雪が降らない川崎でスキーなどもしないので「タイヤチェーン」を用意していませんでした。
東名高速を南下していると、途中「降雪のため袋井で通行止め」という表示がありました。自分的には帰省を中止して自宅に戻るべきと考えましたが、嫁は「帰りたい」と主張。最大のミスはこの時の判断でした。
雪の怖さを知らない嫁の主張をはねつけて戻るべきでしたが、甥が生まれたばかりで帰りたい気持ちが強い嫁に「後から恨まれるのも嫌だな」という思いや、できれば望みは叶えてやりたい…なんて気持ちから先へ進むことを選択してしまいました。
情報では浜松西から再度乗れるはずでしたが、浜松西に着いてみれば通行止め。その時にも引き返す選択肢はありましたがさらに進むことを選択。浜名湖から東名高速に乗れたものの彦根で再度通行止めで一般道へ。あまりに来過ぎてしまってもう戻る選択肢はありません。
SA周辺は人家もなくどんどん積もる雪にいつスタックするか…という心配の中、エクストレイルの4WDのおかげで何とか幹線道路へ出たものの、そこからが大渋滞。ちょっとした坂道を大型車が登り切れずにスタック、ついに立ち往生が発生してしまいました。
それでも2車線の道路などでは右側から動けない車両を抜くなどして少しずつ進み、京都南(だったと記憶)から名神高速に乗ることができ、大阪市内~西名阪自動車道を通ってようやく奈良の実家に到着、自宅を出てから15時間以上が経過していました。
その時、思ったんです。
(1)クルマは4駆(ずっと4駆SUVに乗ってきていました)
(2)チェーン規制でも通行可能なチェーンを準備すべき
(3)携帯トイレ、飲料水と最低限の食料ストックを車内に常備
さらに、アルトピアーノになってからは
(4)マット、寝袋、電気毛布(冬場)を常備
(5)出かける際にはポータブル電源をもってゆく
中でも、チェーンは重要で、チェーン規制の袋井と彦根で降ろされた際にチェーンを持っていれば状況はまったく違っていたはずです。東名高速・名神高速を降りずに走り続けていれば、もっと早く通過できたはずですし、下ろされた一般道で立ち往生にハマることもなかったかもしれません。
(1)(2)をクリア(4駆+チェーン)していれば、(3)から後は必要なかった可能性があります。そういう意味では、冬場に遠出をする際には、チェーンを必ず準備しておくべき…と強く思っています。
帰途には布製タイヤチェーンを準備~使用経験あり
奈良には1週間滞在の予定だったのですが、自宅へ戻る日が近づくにつれて「東海・関東地方は雪」の予報が出たため、念のため、急遽Amazonで購入して積雪に備えたところタイヤチェーンを使用せざるを得ない状況になりました。
10年も前のことなので細かいことはあまり覚えていない(将来ブログに書くなど想像もしていないので写真もないしメモも残していません)のですが、装着は非常に簡単だった覚えがあります。奈良の実家を出る前に一度だけサラッと練習はしていましたが、片側数分で装着できたと思います。エクストレイルの前輪に取り付けました。
裾野~御殿場近辺は圧接状態になっていて、御殿場から中井にかけての下りはかなり怖かった記憶はありますが、走行姿勢が破綻をきたすこともなく通過できたということだけ覚えています。
現在のチェーン規制に適合している
これが一番大事な情報かもしれませんが、布製チェーンは、現在の日本の「チェーン規制」のルールに適合しているので、高速道路などでのチェーン規制時でも、布製チェーンを装着した車両はそのまま走行することが可能です。
布製チェーンというと、どこか「簡易的」「応急的」なイメージがあって、本格的なチェーン規制が敷かれた場合には通行できないのでは?と思わそうですが、実はちゃんと適合しています。
国土交通省によれば、チェーン規制が実施されるのは以下の地域・路線区間です。
都道府県 | 路線番号 | 箇所名 | 区間 | 延長(km) |
山形県 | 112 | 月山道路 | 西川町月山沢~鶴岡市田麦俣 | 15.2 |
山梨県 静岡県 | 138 | 山中湖・須走 | 山梨県山中湖村平野~ 静岡県小山町須走字御登口 | 8.2 |
新潟県 | 7 | 大須戸~上大鳥 | 村上市大須戸~村上市上大鳥 | 15.3 |
福井県 | 8 | 石川県境~坂井市 | あわら市熊坂~あわら市笹岡 | 3.2 |
広島県 島根県 | 54 | 赤名峠 | 広島県三次市布野町横谷~ 島根県飯南町上赤名 | 2.5 |
愛媛県 | 56 | 鳥坂峠 | 西予市宇和町~大洲市北只 | 7 |
都道府県 | 路線番号 | 箇所名 | 区間 | 延長(km) |
新潟県・長野県 | E18 | 上信越道 | 信濃町IC~新井PA(上り線) | 24.5 |
山梨県 | E20 | 中央道 | 須玉IC~長坂IC | 8.7 |
長野県 | E19 | 中央道 | 飯田山本IC~園原IC | 9.6 |
石川県・福井県 | E8 | 北陸道 | 丸岡IC~加賀IC | 17.8 |
福井県・滋賀県 | E8 | 北陸道 | 木之本IC~今庄IC | 44.7 |
岡山県・鳥取県 | E73 | 米子道 | 湯原IC~江府IC | 33.3 |
広島県・島根県 | E74 | 浜田道 | 大朝IC~ 旭IC | 26.6 |
同じページに掲載の「Q&A」には以下のような記載があります。
Q:チェーン規制のチェーンはどんなチェーンでも良いの?
A:タイヤチェーンは、様々な種類の製品が販売されています。チェーン規制中に通ることのできるタイヤチェーンは、 自動車用品店などで販売されているものであれば問題ありません。ただし、スプレーのように薬剤を吹き付けるタイプのものでは チェーン規制中に通ることはできません。
そして「参考」として以下の記載があります。
国土交通省が認めているので、チェーン規制の場合でも布製チェーンで通行可能です。
布製タイヤチェーンのメリット
国土交通省にも効果が認められている布製タイヤチェーンは、金属製あるいはゴム、樹脂製チェーンと比べてどのようなメリットがあり、デメリットがあるのでしょうか。
保管が容易・着脱が簡単
自分が布製チェーンを購入した当時はまだ布製チェーンは世の中にあまり認知されておらず、自分もどんなものなのか知らず、実物が届いてあまりの軽さとコンパクトさに驚きました。
布製なので小さく折りたためてコンパクトに収納できるため車内で保管するにも邪魔になりません。自分は運転席後ろのシートポケットに入れましたが特に邪魔になることはありませんでした。
そして前述の通り、装着は非常に簡単です。
まず、重くないので取り扱いが非常にイージーです。取り付けはタイヤの上半分に被せてからタイヤ半回転分前に出て(後ろに下がって)、残りの半分をかぶせればいいだけの簡単装着ですが、何をするにも軽量なので作業が楽なんです。
例えば、走行中に雪が一旦なくなってしばらく走ったらまた路面に雪…という状況でも、金属チェーンやゴムチェーンだとそのまま走ってしまうでしょうし、先の降雪が分からず取り外してしまったら非常に後悔する場面でも、布チェーンなら着脱が非常に簡単なので、何回でも着けたり外したりが苦にはなりません。
逆に、布製チェーンには雪のないアスファルト走行はダメージになるようなので、逆に小まめに着脱した方が良いようです。
音や振動が少ない・乗り心地がよい
チェーンの着脱で乗り心地が大きく変化しないのも布製チェーンのメリットの1つです。
金属チェーンは特にそうですが、音や振動が激しくて「乗り心地」の面では最悪ですが、布製であれば特に大きな変化はないので気持ちが楽です。
車体を傷つけない
チェーンあるあるですが、走行中の金属チェーンはタイヤ1回転ごとにチェーンの端が車体に当たって車体を傷つけてしまうことがありますが、布製チェーンであればその心配も不要です。
そもそも車体に当たる「もの」がありませんし、万が一何かが触れても布製なので金属チェーンほどの被害を被る可能性は皆無に等しいと言えます。
繰り返し使える
現在の布製チェーンは繰り返し使用でき、洗浄・洗濯も可能となっています。
確か、筆者が購入した布製チェーンは1~2回しか使用できなかったような記憶がありますが、現在の製品はかなり丈夫で長持ちするようになっているようです。
余談ですが、以前は「白い」ものしかありませんでしたが、現在では汚れが目立たない色付きの製品も出ています。
布製タイヤチェーンのデメリット
特に大きなデメリットはないのですが、布製ゆえの制約もあるようです。
短距離向き
雪上での走行は150kmが上限で、速度も50km/hが推奨されています。
あらかじめ降雪・積雪が分かっている場合(時や場所)へ出かける際に、あえて布製チェーンを用意するのは正しい選択とは言えません。雪のある場所へ出かけるのであれば、金属やゴム製のチェーンを用意すべきです。
布製チェーンはあくま緊急用、応急用として備えて置き、安全に降雪積雪地帯を抜けるための道具と割り切るべきでしょう。
ただ自分の経験で言えば、筆者を含めて都会暮らしで降雪時の走行に慣れていないドライバーが雪道を走行する際に、時速50km以上の速度を出すのはちょっと無理ではないかと思います。正直、どう滑るのか止まらないのか分からないのでそんな無謀(に思える)チャレンジはできないと思いますので、その点は特に大きなマイナス要素ではないように思います。
性能はあくまで「脱出」レベル
深い雪では金属やゴム製のチェーンに及びません。
スキーなどで積雪地域へ出かける場合は本格的なチェーンを用意すべきですが、都会暮らしで年に数回の降雪で、万が一積もってしまった際に買い物や送迎などで近隣を走行するのにはうってつけの製品と言えそうです。
雪のある場所・ない場所を併用できない
メリットの「着脱が容易」の部分で記したように、雪のない場所をそのまま走ることはできない製品なので、雪がなくなればその都度着脱が必要…という点ではデメリットと言えますが、作業は非常に簡単で短時間で完了するので着脱を繰り返す場面でもさほど労力と時間を食わないので、デメリットとしては小さなものでしょう。
Sponsered Link布製タイヤチェーン3選
現在、販売されていてショッピングモールなどでも入手しやすい布製タイヤチェーンを4種類ご紹介します。
オートソック / Autosock
1998年にノルウェーで誕生した布製チェーンのパイオニア的存在の「オートソック」。筆者が購入したのも「オートソック」でしたが、誕生してまだ数年の頃だったのですね。
公式サイトには『現在、世界60カ国以上で販売されており、各国の認証機関にその機能性が認められていることから、大手自動車メーカーの純正用品にも採用されています。』とあります。
さらに『緊急車両やロードサービス、消防車や公共機関、空港』などでも使われているそうです。また、日産自動車の純正用品として取り扱われています。
耐久性は『社内および第三者機関を通じて定期的に耐久性テストを行い、乾燥した路面では120km、雪に覆われたテストトラックでは数百kmにわたる耐久性が実証されています。』とのことです。
タイヤへの適合サイズはかなりアバウトで良いようで、直径さえ気を付ければ大丈夫のようです。筆者のタウンエースバン(S412)のタイヤは「165R13-LT」で外周600mmなので『ASK600(HP600)』が適合するようです(※品番の「ASK」と「HP(ハイパフォーマンス)」は気にしなくてよいようです)。
サイズは必ず自身で確認してください。適合は以下から(公式サイト)↓
スノーソックス / ISSE
スペイン、バルセロナのイッセ(ISSE)社が開発・製造する布製タイヤチェーンで、誕生は2003年、日本上陸は2019年でした。
公式サイトによれば『イッセ・スノーソックスは、軽量でコンパクト、取り付けやすいという布製ならではの特性はもとより、金属チェーンに匹敵する圧倒的なグリップ力をほこるヨーロッパ生まれの布製タイヤチェーンです。』
『圧雪、深雪、アイスバーンの他、水分の多い日本の雪路、シャーベット状の路面、どんなコンディションでも安心して走行できます。』
『生地は業界最強級の耐久性を誇り、繰り返し装着しても破れません。また独自のオートセンター機能がイッセ・スノーソックスを走行中も適正な位置に維持しずれません。』とあります。
スノーソックスには「クラシック」「スーパーモデル」「トラックモデル」があります。クラシックモデルの赤い縞模様が印象的です。
タウンエースバン(S412)の「165R13-LT」には『Size62』が適合するようです。
サイズは必ず自身で確認してください。適合は以下から(公式サイト)↓
バイスソック / Weissenfels
「バイスソック」はイタリア生まれの布製タイヤチェーンです。
販売店サイトによれば、『バイスソックはヨーロッパで、スノーチェーンとして「TUV(テュフ)認定」及びオーストリア・スノーチェーン規格「ONorm認定」品です。』とのことで、雪や凍結の多い欧州で人気があるようです。
「TUV」と「ONORM V5121」を両方取得しているのはバイスソックが唯一とのことです。
金属チェーンより着脱が簡単、振動が少ないため静粛性が高く乗り心地が良い点などは他社製品同様の特徴となっています。
旧タウンエースバン(S402/412)の「165R13-LT」の適合サイズが唯一実表記があったのは「バイスソック」だけでした(『S75』が適合)。現行(S403/413)の「175/80R14-LT」は『S81』が適合するようです。
サイズは必ず自身で確認してください。適合は以下から(販売店「株式会社アクセル」サイト)↓
Autosockを実際に入手 new!
Autosockの実物を入手しました。
アルトピアーノ(タウンエースバンS412)のタイヤサイズ「165R13」に適合する『Y17』です。
パッケージ内には小さく折りたたまれた状態で2輪分の布製チェーンが入っていました。
この辺りの収納性・携帯性は金属製やゴム製チェーンと比べると大きなアドバンテージだと思います。ダッシュボードにはちょっと入らないと思いますが、車内に置いていてもあまり邪魔にならないので、冬季は常備しておくのがよいと思います。
もともとしっかり積もった雪道を走るなら金蔵やゴム製チェーンが推奨で、あくまで緊急避難用としての役割が大きい布製チェーンであれば、「いざ」という時に車載していないのでは意味がありませんので、常備が原則かと思います。
Autosocckを広げてみました。
タイヤを包み込むように装着する旨が説明書きにありますが、まさにタイヤを包むような形状をしています。
固い部分は皆無で、これならタイヤハウスやボディを傷つけることもないでしょうし、非常に軽量なので取り扱いが簡単なのも特徴的です。前車CX-5の時には金属チェーンを使っていたので、取扱いの平易さは格段の違いを感じます。
接地面ももちろん布製ですが、少し厚手の特殊な繊維という感じの手触りです。しなやかな印象です。
ただ、舗装路での使用は劣化の原因になるということなので、まだ実走行はもちろん、実装もしていません。実際の使用レビューは降雪があったら…ということになりそうです。
布製チェーンまとめ
今回は布製タイヤチェーンに注目してみました。
布製は、金属製やゴム・樹脂製に比べれば耐久性や限界性能などで若干及ばない部分はあるようですが、それを凌駕するメリットがたくさんありました。
- 軽量コンパクトで保管や携帯に負担が少ない
- 着脱が簡単・容易で短時間で作業終了
- 静粛性、乗り心地の悪化がほとんどない
- 車体を傷つけない
- クリアランスの少ない車両でも装着できる可能性大
- 低コストで購入可能
- ドライ路面でも短距離なら走行可能等、性能の格段の進歩
- 国土交通省によって「タイヤ規制」の対応が認められている
- 自動車メーカー純正用品として多数採用されている
圧雪、深雪、アイスバーンの他、水分の多い雪路、シャーベット状の路面など、多くの路面状況に対応する布製チェーン、『シャーベット状で少し弱い』といった口コミも見られましたが、概ね「役立つ」「緊急用として優秀」との評価が多いようでした。
金属やゴム・樹脂製チェーンを『常備』するのは、小さいクルマほどスペース的に厳しいものがありますし、燃費への悪い影響もないとは言えないことから、本格的な対応は金属やゴム・樹脂製に任せるにしても、『緊急用に常備』するには最適ではないかと思いました。
それでは今日はこの辺で。
コメント