温泉まんじゅう、お好きですか?
どこの何という店の温泉まんじゅうが好きですか?

温泉まんじゅうなんてどれも一緒でしょ?
まさか、そんなこと思ってませんか?
実は、まだ温かい作りたての温泉まんじゅうは、きっと「どれも同じ」と思っている方の想像のはるか上を超えてゆく旨さです。その上、製造する店ごとに食感や皮の味、甘さ、塩味などが驚くほど違います。現代の大量生産品ではない昔ながらの食べものだからこそ、作り手の個性がはっきり出るのです。
今回は、筆者が大好きな伊豆・長岡の温泉まんじゅうについて掘り下げます。
20年以上通い続ける長岡の温泉まんじゅうの魅力

2026年現在、伊豆・長岡温泉でオリジナルの温泉まんじゅうを製造販売するのは、長岡の温泉まんじゅうの元祖と言われる「黒柳」(くろやなぎ)と、総理大臣賞受賞の「柳月」(りゅうげつ)の2軒のみです。
しかし、長岡の温泉まんじゅうの製造販売の店は、昔はもっとたくさんありました。
筆者は、長岡の温泉まんじゅうが好きで20年以上も通っていますが、筆者が実際に温泉まんじゅうを買ったことがある店だけでも10軒以上です。
その10軒以上の店が、それぞれの味や食感など独自性を持っていて、どれ一つとして同じまんじゅうなどない…というほどの個性を放っていたんです。
実はすでに閉じてしまったブログのログに2009年当時の長岡温泉まんじゅうの記録が残っています。
そこには、今はもう閉店してしまった店や、当時まだ営業していた温泉まんじゅう店の写真、湯気の立つ店先の風景などが記録されていました。
今見返すと、当時の長岡温泉には、まだ“温泉まんじゅう文化”の熱気が色濃く残っていたことが分かります。
2009年当時の長岡温泉・温泉まんじゅうの記録

ここでは、2009年当時に書いた古いブログ記事の記載をそのまま再掲載します。
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温泉饅頭なんて、どれも一緒だろ?
とんでもない!
たかが温泉饅頭と侮る(あなどる)なかれ。
製造元によって、まんじゅうの皮の食感や味、あんの甘さや塩分の強さなど、どこの饅頭にも特徴があって、どれも美味しくて驚いちゃいますよ^^お饅頭の頭に押される「焼印」も、各店さまざまで、それを見るのも楽しいんです。
それに、人気店の饅頭は、午前中も持たずに完売になることも日常で、ずっと食べられないお店…なんてのも出てきちゃうんです。
実は、2年前に、一度「長岡温泉饅頭制覇」は成し遂げたんです。
当時は、7つのお店があって、その全てを購入して、食べ比べたんです。そして、我が家なりのランキングをつけて、伊豆旅行のたびに、「今回はココの饅頭」「今回は前回ココだったから、今回はアッチね」などと、その都度違う味や食感を楽しんできたものです。
そして、年月が流れ、久々の伊豆長岡での宿泊で、通りがかりには売り切れで購入できない饅頭も、朝一でゲットできるとあって、2年ぶりの制覇を目論んだのですが、残念なことに、曜日が悪かったんです。
何店舗かが定休日で、「制覇」はできないことが判明しました。
だったら、無理せずに食べたい饅頭だけ買いましょう…ということになりました。
分かるものは、コメントをつけてご紹介します。
今回、久々に長岡に行って驚いたのは、饅頭屋さんにも世代交代があったって事です。なんと、2年前には7店舗だったのに、今は、10店舗がガイド本で紹介されていました。その中に、2年前にあったお店で載っていないところがあるので、もしかしたら、11店舗になったのかもしれません。
順にご紹介しますね。
(ただし紹介はあくまで私の主観ですので)
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こんな書き出しで、現在も製造販売を続けている「黒柳」「柳月」を含む8店舗の温泉まんじゅう店を紹介しています。これ以前に購入したことのある店は味の感想も載せています。
なお、この日に実際に購入したのは「柳月」「いいじま」「ひと花」の3店舗です。
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■黒柳(くろやなぎ)
私が友人から教わって、一番最初に知った長岡の饅頭屋さんです。昭和20年創業の老舗中の老舗で、午前中売り切れの店は、このお店のことです。
まだホカホカのできたてが箱詰めされて、店頭に並んでいます。バラ売りもあり。
あんは「こしあん」で、塩味が若干強めで、皮はクセがなく素直な感じ。ふわふわです。
■柳月(りゅうげつ)
こちらの創業は大正5年(1916年)というから、あと7年で100年の歴史!すごい!「内閣総理大臣賞受賞」受賞の温泉饅頭、名前があって「ながお菓まんじゅう」♪
皮は甘みがあり張ったような感じ。色は薄め。あんは「こしあん」で、塩味が強め。さっぱり系。
パンチの利いたあんが好きなので買いたかったのですが、残念ながら、火曜日は定休日。買えませんでした。
■いいじま


古びたみやげ物屋にしか見えないけれど、れっきとした製造元さん。かわいい感じのおばあちゃんがやっていて、いつ行っても親切。
非常にオーソドックスなお饅頭。シンプルで、特徴がない感じが頼りなさげですが、飽きがこないので、我が家ではベーシックな饅頭として購入機会は多いです。焼印はシンプル。

「いいじま」は柳月の並び(7/11と反対の方向)にあったお店です。今もお店は残っていて「いいじま」の看板もかかっていますが、すでに営業はしていません。(2026/0526追記)
■豆木(まめのき)
比較的新しい饅頭屋さんで、唯一の「つぶあん」の饅頭を製造販売しています。
私自身は、おはぎなど他の食べ物では「つぶあん」がすきなのですが、なぜか、温泉饅頭だけは、「こしあん」に限ります。
そんなわけで、過去に1回しか買ったことがありません。今回は火曜日定休ということで、買えませんでした。
■桃園(ももえん)
2年前の制覇の際に買っただけで、味や食感などはまるで記憶にありません。
好きなお饅頭だった…という記憶だけが残っているのですが、 たまたまのめぐり合わせで、2年前の1回のみの購入になっています。ただ今回、店の前を通らなかったので、存続しているかどうか不明です。

別の記述によると、餡に特徴があってかなり濃いめの餡だったとあります。確か、製造だけをしていて店舗がなく、窓から買った記憶がありますが定かではありません。
■紅粉屋(べにこや)


平成10年創業の新しいお饅頭屋さん(というか和菓子屋さん)。
皮にほのかに黒糖の香り。あんはあっさり味だけれど、奥の深さもあります。今回、購入しましたが、なかなか評判が良かったです。
このお店には、「プチトマト大福」があるのですが、勇気がなくていつも買えません^^;;
「紅粉屋」の焼印あり。
■ひと花(ひとはな)


お饅頭は存在していてもずっと買えなかったお店。というのは、長岡の老舗旅館「はなぶさ」のお饅頭なので、外部店舗がなかったんです(宿泊客専用)。
今回、外から入れて購入できるお店ができていて、初めて買うことができました。
他とはまったく違うお饅頭。黒糖の黒い皮が一番の特徴。しっとりふわふわでいい食感です。
しっとりした「こしあん」と、皮のバランスが絶妙でした。饅頭の焼印はなし。
■佳月園(かげつえん)
他のお饅頭屋さんは、温泉街の中とか、その周辺に集まっていますが、この佳月園だけは、温泉街からはちょっと離れた「長岡駅」のすぐ目の前にあります。
2年前の制覇に時に1回だけ購入しました。さっぱり系だった記憶があります。
■あずさ
「制覇」の後に、1軒閉店する…と聞いていたのが、たぶんここ。
黒柳のならびにあって、威勢よく湯気を出していたのですが、今はないです。残念!
■あやめ園
■あさ香
■つず美湯元園
この3店は、今回初めて知ったお店です。
(「つず美湯元園」も長岡駅前にあるらしいので、「佳月園」と間違っているかもしれません)
次回以降、是非、買ってみたいお店です。
文中に出てくる「2年前に制覇」というのは、この記録からさらに2年前、長岡の温泉まんじゅうを知っている限りの製造元を制覇したことがありました。でも、残念ながらその当時のブログは閉鎖してしまってログも残っていないんです。残念です。
2011年の長岡温泉・温泉まんじゅうの記録
2011年にも長岡・温泉まんじゅうの記録がありますので、再掲載します。
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伊豆長岡温泉には、温泉饅頭屋さんがたくさんあります。正確には何軒あるのか分かりませんが、私が把握しているところでは8軒です。
毎回、気分次第で買う店を替えるのですが、今回は「柳月」と「ひと花」にしました。
■柳月


今回は、普段なかなか買えない~すぐに売り切れる~「つぶ餡」もありました。
こしあんが定番ですけれども、粒あんも美味しいです。早めに行かないと売り切れ多し…です^^
12個入りの箱で「こし餡」と「つぶ餡」を半々…なんていう我侭もきいてくれます(混んで忙しい時には遠慮してくださいね)。
■ひと花

ひと花は、以前はホテル「はなぶさ」内だけの販売でしたが、近年、外部店舗ができました。
こちらのお饅頭は黒糖が特徴です。ふわふわで、黒糖のやさしい甘みが私は好きです。
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2026年の長岡・温泉まんじゅう~黒柳×柳月を食べ比べ
そして現在(2026年)、つい先日、長岡温泉を訪ねて「黒柳」「柳月」の温泉まんじゅうを買ってきました。


2026年5月現在、長岡温泉で自家製の温泉まんじゅうを製造販売しているのは「黒柳」と「柳月」の2店舗のみになってしまいました。寂しいですね。




柳月の温泉まんじゅうには刻印があって、「こしあん」と「つぶあん」でデザインを変えています。

まんじゅうの皮にも違いがあります。黒柳の皮はしっとり系であまり厚みはありません。食感や味でも側の主張は控えめで、餡の引き立て役に徹しています。一方の柳月の皮は若干ふんわり感があって、口に入れるとまず黒糖の風味が拡がります。柳月は皮もしっかり存在を主張します。


黒柳の餡はしっかりとした甘さが押し出してくるタイプで、皮が控えめな分だけ餡の主張が強めに出ています。塩味はあまり感じられず、小豆と砂糖の甘さが前面にでてくる印象です。柳月の餡は、塩味がしっかりあって、すっきりした甘さの餡です。皮に香る黒糖と塩味のついた餡が良くマッチしています。餡の口どけの良さも特徴的です。

どっちが美味しいのかしら?おじいさんと二人だと2箱も買えないから…
どっちが美味しいか…については完全に好みだと思います。強いてどちらか…と言うなら、まんじゅうのしっかりした甘さを味わうなら黒柳、さっぱり系で軽い感じなら柳月でしょうか。
でも、どちらの店舗もばら売り可能なので、2個ずつ買って…なんてことも可能です。

ばら売りは別の意味でもおすすめです。箱入りは製造してから少し時間が経過(箱詰めの時間とかかかるから?)して、温かくてもかすかに温かさを感じる程度ですが、バラ売りは本当に出来立てを手渡してくれることがあります。ほかほかのやつは、製造元でしか食べられない貴重な温泉まんじゅうです。
2009年はもっと店ごとの個性が豊かだった
「黒柳」と「柳月」には確固たる違いがあって、味わいや食感にそれぞれの個性を打ち出しています。
でも、2009年当時を知るものとしては、個性はもっとあった、もっとまんじゅうの概念は広かった…という記憶が残っています。
例えば、柳月の饅頭の皮は黒糖の味と香りがほんのりしますが、「ひと花」の饅頭は思い切り「黒糖押し」でしたし、他店が「こしあん」ばかりなのに対して、新興の「豆の木」は「つぶあん」1本で押してたり…。
そんなことを思い出しながら、「黒柳」と「柳月」の饅頭を食べていると、残念な気持ちでいっぱいになります。もちろん「黒柳」と「柳月」は残るべくして残ったのですから、文句なく美味しいのは確かです。
でも、長岡温泉のあちこちから湯気が立ちのぼり、店ごとに違う温泉まんじゅうを選べた時代を知っている者としては、やはり少し寂しさを感じてしまうのです。
長岡・温泉まんじゅう~なぜこんなに減った?

2009年当時は筆者が把握しているだけでも11店舗もあった長岡温泉の温泉まんじゅう。2026年現在は「黒柳」「柳月」の2店舗のみになってしまいました。
なぜそんなに減ってしまったんでしょう?
ここからはあくまで筆者の想像でしかありませんが、一言で言えば時代の流れ…でしょうか。
ホテルや旅館のお茶菓子需要があった?売店のお土産販売に繋がる?
一つヒントになるのは、過去記事の再掲載の中にある『ひと花は、以前はホテル内だけの販売でしたが、近年、外部店舗ができました』という一文。
おそらく、以前は長岡やその周辺のホテルや旅館の各部屋に置いてるお茶菓子に「温泉まんじゅう」を採用している宿泊施設が少なからずあったんじゃないかと思うんです。
「ひと花」のようにホテルが自前のまんじゅうを製造して、ホテル内だけで販売やお茶菓子に使っていたように、それぞれの製造元がホテルや旅館に納入していた可能性は高いと思うんです。宿泊施設側は、お茶菓子に置いていた温泉まんじゅうを売店でも売っていて、宿泊客が「饅頭美味しかった、どこで売ってるの?土産に買いたい」という要望に応えていたんじゃないでしょうか。
そうでなければ、あれだけの温泉まんじゅう製造元が成り立つはずはない…って思えるのです。
保存が効いて個包装のお菓子が求められるようになった?
時代が進むにつれて、世の中は「個包装」で「保存が効いて」、土産に持って帰っても安全安心なものが求められるようになったのでは?と想像できます。
早朝から製造元で作られて納品された温泉まんじゅうは、きっと当日しかお茶菓子には提供できなかったと思います。今でも、筆者自身が買って帰った温泉まんじゅうは、翌日には皮の水分が抜け始め、フワフワ感が徐々に減ってしまいます。
個人で買って自分で食べるならいいですが、宿泊施設のお茶菓子や土産はそうはいかなかったんでしょう。徐々に、今も盛んに土産物屋で売られているような賞味期限が長く、個包装のお菓子にとって代わられていったのではないかと思います。
どれでも一緒でしょ?の殻を破れない
もう一つ、温泉まんじゅうが衰退した理由の一つに「どれでも一緒でしょ?」が考えられます。
筆者が知っているだけで、実際には個々に個性があって、店ごとにオリジナリティがあるのに「どれでも一緒でしょ?」と言われるものがいくつかあります。
温泉まんじゅうもそうですが、例えば「かまぼこ」。
「鈴廣」や「籠清」のカマボコを食べてみると分かるんですが、スーパー等で売っているものとあきらかに違って、味わい深く弾力がすごいです。筆者も何かの折に鈴廣のカマボコを食べて「違うんだ~」と感心した覚えがあります。
また、素麺もそうです。
筆者の家内の実家は奈良県にあるんですが、奈良県は「三輪素麺」が有名です。遊びに行った際に三輪素麺の「山本」にいって、その違いに驚きました。素麺も「どれでも一緒でしょ?」と言われがちですが、安物との違いは歴然です。本当に旨いものなんだと実感します。
それ左様に、温泉まんじゅうも個包装で、製造から何日もたってもフンワリしていて、賞味期限はずっと先…なんて大量生産のお土産まんじゅうとはまったく次元が異なるんですが、そこはどうにも認知が拡がらないジレンマがあります。
その他にもマイナス要素があれこれ…
例えばコロナで客足が減ってしまったとか、モダンな宿泊施設ばかりに客があつまり老舗のホテルや旅館は古臭くみえてしまうとか、ネットへの対応が遅れたとか、キャッシュレスへの対応が遅れたとか…等々。
古い温泉街の長岡温泉は、温泉まんじゅうをはじめとする古くからの文化があった一方で、近代化は遅れたのではないか…。そう考えると「そうかもなー」と思えてきます。
もちろん、あくまで筆者の想像ですし、筆者はその筋の学者さんではないので、素人考えですが、いくつかは当たっているのかもしれません。

伊豆長岡に限らず、こうした「店舗で作ってその場で食べる和菓子文化」は、実は今ではかなり貴重です。
例えば、「片瀬・江の島ぶらぶら散歩」の記事内で紹介した江の島神社参道の「紀の国屋本店」の「女夫まんじゅう」も店舗で製造して販売しており、作りたてを店舗でお茶付きで食べることができます。
伊豆・長岡温泉まんじゅう食べ比べ~まとめ
「温泉まんじゅうなんて、どれも一緒でしょ?」
そんなイメージを持っている方にこそ、一度、温泉地の製造元で“まだ温かい作りたて”を食べてみてほしいと思います。
きっと、その印象は変わるはずです。
今は「黒柳」と「柳月」しかありませんが、それでも、実際に食べ比べてみると、店ごとに皮の風味や食感、餡の甘さや塩味、口どけまで驚くほど違います。そして、その違いこそが、昔ながらの手作り文化の面白さなんだと思います。
かつての長岡温泉には、10店舗以上もの温泉まんじゅう店がありました。
温泉街を歩けば、あちこちから湯気が立ちのぼり、店ごとに違う饅頭を選べる時代が確かにあったんです。そんなことも次第に忘れ去られてしまうのが寂しくて、今回の記事を書きました。自分の昔書いたものをどこかに記録しておきたい…とも思ったからです。
2026年現在、自家製の温泉まんじゅうを作り続けているのは2軒だけになってしまいました。でも、だからこそ今、長岡温泉で食べる温泉まんじゅうには、大きな価値があるように思います。
ただのお土産ではなく、温泉街の歴史や文化、その土地の記憶まで包み込んだ食べもの。
長岡温泉を訪れたらぜひ製造元へ足を運んで、できれば「ばら売りの出来立て」を味わってみてください。
箱入りとはまた違う、本当の温泉まんじゅうの旨さに出会えるかもしれません。



