今回はキャンピングカーの駆動方式(4WD)について考えます。
自然に分け入るキャンピングカーは4WDがマストでしょ
なんて意見もあるかもしれませんが、その辺は、あながちそうとも言い切れない部分があります。
筆者は、キャンピングカーはアルトピアーノが初めてですが、ずっとSUVに乗ってきたので4WD歴はかなり長いのでそれなりに経験もありますが、実は4WDって意外に怖い面も持っているので、その辺りも併せてお話ししようと思います。
ちなみに筆者のアルトピアーノはフルタイム4駆車です。
※本稿ではほとんどの場合「アルトピアーノ」を「タウンエースバン」と読み換えてもOKです。
4WDのメリットとデメリット
まずはキャンピングカーに限らず、4WDのメリットやデメリットをおさらいしておきましょう。
4WD=Four Wheel Driveの略で、日本語では文字通り「四輪駆動」と訳されます。
車の前か後ろかどちらかの2輪に駆動力をかける2WDに比べて、車体の四隅にある4つのタイヤすべてに駆動力をかける4WDは、車体が安定して悪路の走破性が向上するのが最大のメリットです。
一方、2WDより構造物が多くなるので車体が重くなり車両価格が割高で、重い車体を動かすため燃費が悪化し、構成部品点数が多くなるのでメンテナンスに手間とお金がかかるのがデメリットです。
アルトピアーノの2WDと4WDの価格差は36~37万円あります。ハイエースでも30万円超の価格差です。他車の場合でもだいたい同程度の価格差があります。
この30~40万円の価格差を、「安定性が高い」「悪路走破性が高い」メリットを買う費用として「妥当」と見るか、「割高」と見るかが、4WDを選ぶ分かれ目かもしれません。
しかも30~40万円の価格差を出して購入したあとも、燃費やメンテ費用などでも2WDよりお金がかかる傾向にあるので、コスト面では4WDは決して優等生とは言えません。
4WDのメリットを生かすにはある程度の運転技量や経験が必要
都会に雪が降ると街中の4駆比率が上がります。これ、4駆乗りあるあるです。
自分も4WD車を購入したての頃は、雪が降ったり大雨が降ったりすると、自宅周辺を4駆で徘徊したものです。
でも、4駆って魔法の仕組みではないので、街中の数センチの雪でもスタックします。それも思ったより全然早く…。「ここは行けるか?」なんて挑んだ近所の坂道を登り切れずに、ズルズル滑りつつバックで下りたこともあります。
一方、筆者が住まうマンションに青森県出身の方がいます。その方は後輪駆動のスポーツハッチに乗っていますが、雪の走り方が実に上手です。扁平率の高いスポーツタイヤでも雪道でタイヤを空転させずに後輪2駆で平気で走っています^^
つまり、滑りやすい路面でもいかにタイヤを空転させないように運転するかの「技量」が重要なんです。
滑りやすい路面(雪・泥・砂など)で、普段、街中のドライな路面を走っている時のようなラフな操作をしたら、いかに4WDでもいとも簡単にタイヤは空転しますし、空転したら状況は悪化します。
知識や経験のない人ほど、タイヤが空転するとアクセルを踏み込みがちです。
それが泥や砂地の場合は、空転したらタイヤが泥や砂を掘ってしまってどんどん埋まってしまいます。こうなると自力での脱出は難しくなります。よほどの技量と経験がないと不可能と言えます(あっても無理かな)。
もちろんLSDなど、空転~穴掘りを回避する仕組みもありますが、その存在や使い方を知らなければないも同然ですし、例えデフロックしたとしても、それを活かす運転操作ができなければ脱出は難しいです。
つまり、4WDならオールマイティ…ということではなく、4WDの仕組みや機能の知識を持ち、それを活かせるある程度の運転技量と経験があってはじめて4WDはその真価を発揮する…と考えた方がよいです。
4駆は「心的ブレーキ」が利きにくくダメージが大きくなりがち
スタックしてしまっても、近くに別の4駆乗りがいれば助けてくれる場合もありますが、これが自然に分け入った場所でキャンピングカーに起こったらどうなります?
4駆に乗る際に重要なのは
「これ以上はまずい」
「ここから先はやばい」
という「自制心」です。
言ってみれば「心的ブレーキ」です。
特に単独の場合には、スタックしたら自力で脱出するしかないので、自力ではどうにもならない状況まで突き詰めない勇気も必要ですが、4駆は「走れる」「行ける」という心理が働くので「心的ブレーキ」が利きにくい乗り物です。
もちろん4駆は走破性が高いですが、それは2駆に比べての話しで、オールマイティではありません。
2WDだと「無理だな」「危険だからやめておこう」となるところ、4WDだと「大丈夫じゃない」「行けるよきっと」となりがちです。
でも「行ける」ことと、自力で「戻って来れる」ことは違います。
もし、誰も足を踏み入れていない自然の中に分け入ってキャンピングカーで車中泊…なんて思って4駆を選ぼうとしているなら、ご自身の経験や技量、心的ブレーキのことも併せて4駆の選択を考えてみてください。
制動時は4駆は関係ない…というけれど関係「おおあり」だと思う
4WDは駆動方式であって制動には関係ない。
アクセルには関係するけど、ブレーキには影響しない…なんて言われていますが、実際に4WDに乗っていると「関係ない」とは言えないと思うんです。
もちろん、制動距離が短くなるなんてことはありませんが、姿勢の安定やエンジンブレーキの効きとしては制動時に大きな影響があると感じます。
雪道で制動する際、大事なのは、まっすぐ前を向いていることです。
まっすぐ前を向いていれば、昨今のクルマはアンチロックブレーキがついていますので、最短距離で姿勢を乱さずに泊まれる可能性がぐっと高まります。
でも、制動前やエンジンブレーキの段階で姿勢を乱して車体が少しでも横向きにぶれていると、安定した姿勢のままアンチロック任せで止まれる保証はありません。
そういった意味で、4WDであることは制動にもある程度は関係あると思います。
結論~キャンピングカーは4WDにすべきか2WDがよいのか
あくまで自分の考えですが「4WD推し」です。
雪深い大自然に分け入るとかは別として、最近のキャンプ場はサイトへのアプローチが舗装されているケースが増えていますが、まだまだ未舗装の施設も少なくありません。
また、サイト自体は土や砂地のところが多いので4WDなら安心…という側面は確実にあるからです。
4WDならどんな道でもどんと来いではないですが、少なくとも2駆よりは困った状況に陥りにくく、脱出しやすいことは確かですから。
上記では、結構限界的な話しをして脅かしたかもしれませんが、それは嘘ではないとしても街中や普段使いの中でも4WDは「有用だ」と思います。
何ごとにも「望外のできごと」はあるもの。4WDだってJAFの救援が必要な場面はあるはずです。
アルトピアーノ(タウンエースバン)フルタイム4WDの走破性
アルトピアーノの場合は、シティーコミューター(※)としての色合いが濃く、たまに施設を利用した車中泊…といった使い方をするのであれば、4WDはあえていらないのかなあ…という気もします。
※都市内の移動手段
ちなみに筆者のアルトピアーノは4WDです。
ずっと4駆に乗り続けてきたので、4駆じゃないとなにか不安、男性がスカートをはいた時のような頼りなさや所在なさを感じちゃうんですよね^^;
とはいえ、アルトピアーノの4WDは、デフロック付フルタイム4WDで「VSC(横滑り防止装置)+TRC(トラクションコントロール)」を装備しているので、決して走破性が低い部類の4駆システムではありません。
こちらのサイトさんで4WDの仕組みの違いによる走破性の高さを比較されています。ご参考までに。
もちろん、4WDの仕組みがまずまずだからといって、果敢に雪に挑むような車ではありませんが。
4WDは自分の使い方では不要、購入額を抑えたい等の理由で2WDにする方もいると思いますし、個々の使い方での要・不要の判断はその方にしか分からないので是非はありませんが、自分としては、4WDは「保険」だと思っています。
ちなみに「VSC」と「TRC」を装備しているのは、2021年のモデルチェンジ以降のタウンエースバンです。モデルチェンジ前の(我が家のアルトピアーノも含む)は「VSC」と「TRC」を装備していないので、下手すると亀の子です。十分ご注意を。
旧型アルトピアーノの場合は、その「保険」が少々チープなのです^^;
今回は、アルトピアーノ、そしてキャンピングカーの4WDについて考えてみました。
30~40万円の差額があるので、必要ないなら無理に選ぶ必要はありませんが、アルトピアーノに関しては、4WDよりも不要と思われる装備もあるので、内装装備より車の基本性能を上げる方へお金を使うのもありかもしれません。
それでは今日はこの辺で。
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