アルトピアーノのルーフに『200WCIGSフレキシブルソーラーパネル』の取付けが完了しました。取り付け後に実際に使用してみて感じたCIGSフレキシブルソーラーパネルのメリットやデメリット、使い勝手などをレビューします。
アルトピアーノのルーフに取り付けたCOGS系ソーラーパネル、なかなかしっかり発電してくれるので気に入って使っています。最大発電量に近い数値を普通に叩き出してくれる上に、曇天や明るさがあれば雨天でも発電してくれる「発電能力の高さ」が大きなメリットです。
今回、車両ルーフに直貼りで貼りつけたソーラーパネルは、一般的な結晶シリコン(単結晶や多結晶)とは異なり、C=銅・I=インジウム・G=ガリウム・S=セレンの化合物半導体でできています。
その辺りの目新しさや、発電の能力などの未知の部分についてレポートしたいと思います。
CIGS系ソーラーパネルのメリット・デメリット
ソーラーパネルというと「単結晶」「多結晶」などの「結晶シリコン」製が一般的です。
シリコンの結晶から削り出す「単結晶シリコン」は純度が高く、発電ロスが少ないのが特徴です。結晶が整然と並んでいるので見た目にも綺麗なパネルとなりますが高価です。
単結晶シリコンを削り出す際の端材などを使って作られる「多結晶シリコン」は使用されているシリコンの量が少ないため、コストが安いのが最大の特徴です。結晶が不規則なため見た目があまり美しくありません(かといって汚いわけではありません)が、単結晶に比べて非常に安価にパネルを作ることが可能です。
今回、車両ルーフに取り付けたのは、これらのシリコン系のパネルではなく、「C=銅・I=インジウム・G=ガリウム・S=セレン」の化合物半導体でできています。
化合物半導体でソーラーパネルを作るメリット・デメリットは以下の通りです。
CIGSソーラーパネルのメリット
CIGSソーラーパネルには、結晶シリコン製にはないメリットがあります。
- 薄膜しやすい
薄く軽量で変形が可能なので設置場所を選びません。
曲面にも設置できるので、車両のルーフへの設置に向いています。 - 製造が簡単
結晶シリコン製の約半分の工程で作れるため、製造の手間や期間を削減可能です。 - 製造時の消費エネルギーやCO2排出量が少ない
製造工程が少ないため、その分CO2排出量が抑制できます。 - 曇天や影に強く効率よく発電できる
結晶シリコン製は「影」に弱く、一部に影ができると全体の発電量が低下してしまいますが、CIGSパネルは影の影響を受けにくく発電量の低下が限定的です。 - 温度変化(高温)に強い
結晶シリコン製は高温に弱く出力低下が顕著ですが、CIGSパネルは高温になった際の出力低下が少ない特性を持っています(ソーラーパネルは日向に設置するものである上に「黒い」ため熱が発生しやすい特性があるため、高温での出力低下が少ないことはCIGSの大きなメリットです)。
CIGSソーラーパネルのデメリット
結晶シリコン製にないメリットを持つCIGSパネルですが、デメリットがないわけではありません。
- 発電効率が悪い(15~16%)
シリコン系は変換効率が高い(20%以上)ですが、CIGSは15~16%と発電効率が低めです。発電効率が悪いと同じ発電量を得るためにより広い面積が必要になります。 - 製造コストが高い
まだ新しい技術であることも含めて製造コストは結晶シリコン製ほど安くはありません。今後、量産化が進めば安くなる見込みはありますが、現在はまだまだ結晶シリコンが主流です。 - 希少素材を使用する
インジウム、ガリウム、セレンなどの希少な原材料を使用するため、供給不足や価格の上昇等のリスクが懸念されます。地政学的リスクを受けやすい点はデメリットです。
薄型軽量で局面に設置可能なフレキシブルソーラーパネル
今回車両に取り付けたソーラーパネルには、CIGS製であることのほかにもう1つの特徴があります。
薄型軽量で局面に設置可能な「フレキシブル」であることです。
フレキシブルソーラーパネルのメリット
フレキシブルソーラーパネルのメリットは「薄型」「軽量」「変形可能」です。
写真でも分かるように、タウンエースのルーフは左右が若干落ちている「緩いカマボコ型」ですが、問題なく設置できたことはフレキシブルのメリットでしょう。
また軽量なため重量増が最小限で、車両の重量バランスや動力性能にほとんど影響しませんし、車高も上がらないので立駐への侵入もゲートくぐりも心配・不安なしです。さらに走行中の風の抵抗が最小限で、風きり音はほぼありません。
つまり、フレキシブルソーラーパネルは、パネルを車両に取り付けたことによる影響が最小限ということになります。
フレキシブルソーラーパネルのデメリット
薄型軽量であることはフレキシブルソーラーパネルの大きなメリットである反面、デメリットにもなり得る要素です。
最も懸念されるのは「温度」です。
結晶シリコン製であっても、CIGS系であっても、程度の差こそあれ、ソーラーパネルは温度が上がると発電量が落ちてしまいます。CIGS系は熱に強く発電量の下降が少ないですが、それでも減少しない訳ではありません。
ここで薄型のフレキシブルであることが「熱」に対してデメリットになってしまうケースがあります。
結晶シリコン製など柔軟性のないパネルの場合は『直貼り』はできないので、キャリアなどに載せて設置することになりますが、車体とキャリアの間にすき間があることで「放熱」効果を生みます。
フレキシブルソーラーパネルを直貼りする場合には、車体との間にすき間がないため熱が溜まりやすくなってしまいます。
フレキシブルソーラーパネルの直貼りは熱を溜めやすい設置方法ですが、比較的熱に強いCIGSパネルを選ぶことで、熱による出力低下を補うことができる可能性があります。
筆者は、実際にCIGS系フレキシブルパネルを車両ルーフに直付けしていますが、7~8月の炎天下でも170~200Wまで発電しますので特に熱による出力低下は感じません。
フレキシブルであることで熱が溜まりやすいデメリットを、熱に強いCIGSパネルであることで補っているのかもしれません。
また、フレキシブルパネルベタ付けには「車内温度の上がりにくさ」という派生的なメリットもあります。
ルーフにソーラーパネルを直貼りする際に、車体ルーフには断熱塗料を塗りましたし、パネルと車体の間の凹部分には断熱材を入れているので、ルーフの直射日光による車内への熱の侵入を多少防いでくれているように感じます。
微妙ですが以前より夏場の車内温度が上がりにくくなったように感じます(あくまで感覚で実証できることではありませんが)。
CIGSソーラーパネルの設置と活用状況
車両(タウンエース・アルトピアーノ)のルーフに貼り付けて設置しています。
パネルと屋根板の間の凹部分に断熱材を挟んで上下に強力両面テープ、凸部分には車体とパネルを強力両面テープで貼りつけています。
画像でわかるようにほとんど「厚み」がないので風の抵抗を受けにくく、車高・車重への影響も最小限です。また、周囲をコーキングしているのでパネル下に風や雨水が入り込まないのでパネルが浮くことがなく、両面テープとコーキング剤だけでしっかり固定しています。
CIGSソーラーパネルの発電効率の悪さは逆にメリットになる
貼り付けたパネルがアルトピアーノのルーフの大きな面積を占めていることから、デメリットの1つでもある「発電効率の悪さ」を表していますが、だからといって実用上は大したデメリットにはなりません。
家庭用のソーラー発電システムでは、屋根に何枚のパネルを設置できるかが「発電量」に大きく影響しますが、1枚(あるいは2枚)を設置する車両ルーフの場合には、大きさの大小(発電効率の良し悪し)は大した影響はありません。
逆に「断熱」という観点から見れば、「発電効率」が悪くパネルが大きい方が断熱材などを施工した面積も広くなるため、断熱性は良くなるはずです。
ケーブルの取り回しはフレキシブルに
ケーブルは、ルーフ後端からハッチ内側に這わせ、テールランプ裏から車内に引きこんでいます。
車内に引き込んだケーブルはリアクオーター窓下のパネルの脇隙間から室内に出しています。先端は汎用性の高い「MC+-4」プラグにしてあり、サブバッテリーには接続していません。
こうして「MC-4」プラグの状態であれば、サブバッテリーの充電(充電コントローラーが必要=未設置)はもちろん、ポータブル電源への充電も簡単に行えるのでフレキシブルに活用できます。
自宅駐車場に駐車している際には、サブバッテリーを充電するより、延長ケーブルで自宅内に引き込んでポータブル電源に蓄電し、日々の生活の中で節電対策に利用した方が効率的です。
BougeRV YUMA2000 CIGSソーラーパネルレビュー
以下は、BougeRV「YUMA2000」CIGSフレキシブルソーラーパネルを実際に使用してみて感じたことです。
結論から言って、このソーラーパネルを車両ルーフに設置したのは大正解だったと思っていますし、CIGSパネルならではのメリットによる恩恵は大きいと感じています。
以下は、出力200Wクラスのソーラーパネルのスペック比較です。
BougeRV「YUMA2000」・Bluetti「PV200」・EcoFlow「両面受光220W」を比較しました。Bluetti製・EcoFlow製はいずれも単結晶シリコン製です。
BougeRV Yuma2000 | Bluetti PV200 | EcoFlow 220W | |
素材 | CIGS | 単結晶 シリコン | 単結晶 シリコン |
最大出力 | 200W | 200W | 220W |
開路電圧 (Vmp) | 31.5V 25.0V | 26.1V 20.5V | 21.8V 18.4V |
短絡電流 (Imp) | 8.64A 8.02A | 10.3A 9.7A | 13.0A 12.0A |
変換効率 | 16% | 23.4% | 22-23% |
防塵防水 | IP68 | -(※) | IP68 |
サイズ(cm) | 217*66*0.15 14,322㎠ | 226.5*59*? 13,363.5㎠ | 183*82*2.5 15,006㎠ |
重量 | 3.2kg | 7.3kg | 9.5kg |
通常価格 | 75,999円 | 59,980円 | 69,300円 |
冒頭の「特徴」の部分にもあったように、CIGSパネルは結晶シリコン製よりも発電効率が悪いことがわかります。発電効率が悪いと、同じ発電量を得るためにより大きなパネルが必要ですが、サイズの違いはあまり大きくありません。
重量はBluetti製の半分以下、20W大きいEcoFlow製の約1/3と非常に軽量であることがわかります。
以下では、実際に使用してみてわかるCIGSのメリットやデメリットを個別にレビューします。
(※)Bluetti PV200には防塵防水性能の記載はありませんが、取説に「使用時、湿気及び水を避けて濡れないようにご注意ください」の記載があります。
CIGSパネルおすすめポイント① 薄く軽量で変形可能で設置場所を選ばない
まず何より、薄くて軽量である点が車両ルーフへの取り付けにおいて大きなメリットです(フレキシブルのメリット)。
- 車高が増えない、重心が上がらない
我が家のマンションは車庫入り口に220cmのゲートがあるため、190cmのアルトピアーノが通過するためには最大で30cm、安全を確保するには20cm程度の余裕しかないため、車高の増加は避けたいところです。
また、どんなクルマでもそうですが「重心」は低いに越したことはありませんし、走行中に風の影響を受けやすいバンタイプの車体は特に重心が上がるのは避けたいところです。 - 車重が増えない
タウンエースバン(S412)はエンジンが非力で4ATと言うこともあって、パワーもトルクも「ウエイトレシオ」は決して芳しくないので重量増は走行性能の悪化に直結するため、わずか3.2kgの重量と、ルーフキャリア不要で設置できる点は、非力なタウンエースにとって有難いスペックです。 - 屋根の形状にフィットする
タウンエースのルーフは凹凸がある上に、中央が高く左右が若干下がった緩いカマボコ型ですが、柔軟性のあるCIGSパネルであればルーフの形状にフィットするので取り付けが簡単です。
これらを勘案すると、CIGSパネルはいずれの問題もクリアできる点で、車両ルーフへの取り付けにおいてかなり優先度の高い選択肢と言えそうです。
CIGSパネルおすすめポイント② 高温時の出力低下が少ない
CIGSパネルが温度変化(高温)に強い点にも要注目です。この特性は高温になりがちな車両ルーフへの設置に向いていると言えます(CIGSのメリット)。
アルトピアーノではパネルと車体(ルーフ)の間に断熱材を挟んでいることもあって、非常に日差しが強い場合でも出力低下は見られず、安定して高出力を保てています。
CIGSパネルおすすめポイント③ 好条件下で発電量が多い
ごく普通に晴れた日でコンスタントに150~160W程度の発電が可能で、スペック上の200Wの平均75%~80%といったところです(CIGSのメリット)。
これは、車両ルーフにほぼ水平に設置したパネルに対して、まだ寒い時期の太陽は低くパネルに正対するような位置にいないことが原因です。
そういう意味では、固定されたパネルより、位置や角度を自由に替えられるポータブル式のパネルの方がコンスタントな発電量を稼ぐことができると言えます。
昼12時台は1日の中で最も発電量が多くなる時間帯です(太陽の位置の問題)。
1~2月に比べると、5月には日が高くなるため、水平に設置されているパネルに太陽がより直角に近い角度で位置するようになったため発電量が増加したと考えられます。
ちなみに、スペック上で最大発電量200Wを謳うパネルで186Wの発電はスペックの93%達成に相当します。
さらに、6月に入り昼12時台の太陽がほぼ真上に位置するようになり、過去最大192Wを出力しています(最大発電量の96%に相当)。今年2023年の「夏至」は6/21なので、今の時期の正午の太陽はほぼ真上に来ていると言えます(最も発電効率が良い時期)。
最大200Wのパネルでこれだけの発電量が得られれば、車載用としても、家庭用としても充分な発電量と言えそうです。
例えば、1260WhのEFDELTAの場合、仮に残量20%から190Wで発電・充電した場合、5.3時間ほどで満充電にすることができますので、消費した蓄電量を1日で回復できることになり、充分実用的と言えると思われます。
おすすめポイント④ 日差しの少なさ(薄日・曇天・影)に強い
もう1つ、CIGSパネルを使っていて感じることがあります。
それは『日差しの少なさに強い』ことです(CIGSのメリット)。
あまり天気が良くない日でも、良い天気でもまだパネルに日差しが当たる前から発電していることがよくあります。写真はバラの鉢にくっきりとした影ができないような薄曇りの日でも77Wの発電をしているところです。
CIGS系パネルは『パネルに影がさした際でも発電できる』と言われますが、たしかに影がさしていても発電することは確かですが、やはり発電量自体は急激に減少してしまいます。それよりも自分の感覚としては、弱い太陽光でも発電する…という方が強い印象です。
画像は雨がやみかけのタイミングで、少し明るくなってきたとはいえまだ小雨が降っていて太陽は全く顔を出していない状態ですが、それでも26Wの発電をしています。
たった26Wと思うかもしれませんが、少ない発電量でも何時間も充電し続ければある程度は容量が回復するわけで、災害時などを勘案するとこうした能力は有用ではないかと思います。
ちなみに、陰に強い理由は48個のバイパスダイオードだそうです。
パネル内のダイオードによって日陰になっても故障が生じても、その部分をバイパスして電流が正常に流れるのだそうです。
図の最下段に書かれている「ホットスポット」とは、長時間に渡って影になり続けた場合(例えば鳥の糞など)、影になった部分が発熱することを指します。長時間ホットスポットができ続けると熱によってセルが破損することもあります。
Yuma200は、そもそもシリコンセルを使用しないCIGS素材のためホットスポットによるダメージを受けない…ということです。
おすすめポイント⑤ 汚れていても水滴があっても発電する
CIGSパネルは汚れにも強いです。汚くてお恥ずかしいですが、掃除せずに今の状態のまま撮影しました。
逆光で見えにくいですが、雨の際に埃が大量に付着しますし、少し前までは黄砂も酷かったのですが、ほとんど掃除もせずに使っていますが発電量には影響しないようです(CIGSのメリット)。
パネルに水滴が残っていても発電力にはあまり影響はないようです。最初の頃は気になって雨上がりで太陽が出たタイミングで水滴をふき取っていましたが、電源側の充電量の表示はほとんど変化がありませんでした。
BougeRV製CIGSフレキシブルソーラーパネル まとめ
今回は、まだ寒い時期にアルトピアーノのルーフに取り付けたBougeRV製CIGSフレキシブルソーラーパネルを実際に使用してみて感じてた特徴やメリット&デメリットなどをまとめてみました。
特徴の項で、CIGSパネルのデメリットを3点挙げましたが、価格が割高である以外のデメリット「製造コスト」や「素材が希少・高価」は、購入者が日々の利用上で感じられるようなデメリットではありません。唯一購入時に感じる割高感も、BougeRVが積極的に実施するセールをうまく利用することで納得できる価格で購入することが可能です。
薄く軽量でフレキシブル、高温に強く、曇天や影がさしても発電する発電力の高さは、まさに車両ルーフに取り付けるためのソーラーパネルと言えますし、例えば庭やベランダに設置するようなシチュエーションでも、薄くて軽いことは大きなメリットになります。
耐久性の面も、車両に貼りっぱなしでも問題ないということは庭にも設置して放置しておいても大丈夫…ということで安心して使用できます。
たまたま偶然ですが、同じフレキシブルでもCIGS系であることで、フレキシブルの弱点を補っているような部分があって、このパネルを設置して大正解だったと感じています。
少し値段は張りますが、ソーラーパネル購入を検討されているならCIGS系フレキシブルソーラーパネルも候補の1つに加えて検討されてはいかがでしょうか。
それでは今日はこの辺で。
※「貼り付けタイプ」ではなく、取付穴が開いている「穴あきタイプ」、発電量が半分の「100Wタイプ」もあります。