今回は、リン酸鉄リチウムイオン電池を採用したポータブル電源がおすすめの理由について深堀します。三元系リチウムバッテリーも併売される中、どうしてリン酸鉄リチウムがおすすめなんでしょうか。
さらに昨今では「半固体リン酸鉄リチウム電池」を採用し、さらに高い安全性と長寿命を実現したポータブル電源を選ぶことも可能です。
ポータブル電源はアウトドアで大活躍しますし、災害への備えや節電対策としても非常に有効です。あまり報道されませんが、毎年のように発火事故や爆発事故などが起きている現実もあります。そうした事故を起こしにくい新しい電池素材としてリン酸鉄リチウムが注目されています。
どうせ買うなら丈夫で長持ちでしかも危険性の少ないバッテリーを…と思うのは誰しも同じです。
そんなユーザーの要望・期待にピッタリなのがリン酸鉄リチウムイオン電池を採用したポータブル電源です。今回はリン酸鉄リチウムイオンバッテリーのおすすめポイントを深堀してみます。
なぜいま『リン酸鉄リチウムイオン電池』がおすすめなのか
2022年以降、大手ポータブル電源メーカーも含めて新製品のほとんどが「リン酸鉄リチウムイオン電池(LiFePO₄)」を採用するようになりました。
なぜいま、リン酸鉄リチウム電池が注目されるのでしょうか。
その理由は大きく2つです。
(1)安全性が高い
(2)長寿命
この2点についてそれぞれ分かりやすく解説します。
理由① リン酸鉄リチウムは安全性が高い
例えば、iPhoneをはじめとするスマホやノートPC、モバイルバッテリー、ポータブル電源等に『リチウムイオン電池』が採用されていますが、一口に「リチウムイオン電池」といっても使われる素材によっていくつかの種類があり、安全性についても明確な違いがあります(図参照)。
「コバルト系リチウムイオン電池」は世界で初めて開発されたリチウムイオン電池ですが、熱暴走の可能性が高く現在ではあまり使われなくなっています。
この「熱暴走」は非常に重大な問題で、リチウムイオン電池の種類(使われる素材)によって熱暴走が起こりやすさ・起こりにくさに幅があります。
コバルト系の反対側、つまり熱暴走が最も起こりにくいのが『リン酸鉄系のリチウムイオン電池』で、電池の内部抵抗が低いため充電時などに発熱しにくく、仮に発熱した場合でも結晶構造が崩壊しにくく、安全性が高いことが特徴です。
反面、エネルギー密度が低く同じパワーを得ようとすると、三元系に比べてどうしても大柄になりやすいのは「ポータブル(持ち運び)」電源としては弱点になりますが、昨今では各メーカーの研究開発によってエネルギー密度が徐々に高まりつつあり、こうした弱点もいずれ解消されるはずです。
従来の三元系リチウムイオン電池では、高温になると正極に使用している金属から酸素が離脱しやすいため、発火・爆発が起こりやすくなりますが、リン酸鉄リチウムイオン電池では結晶構造が崩壊しにくいため、400℃の高温になってもガスを発生せず発火や爆発しないとされています。
時折、ニュースなどでリチウムイオン電池の発火によって火災が発生したり、スマホ電池が充電中に高温になり突然爆発した等の報道を目にしますが、リン酸鉄リチウムイオン電池はそうした危険性が極めて低い安全な電池というわけです。
ちなみにiiPhoneなどのスマホで採用されているリチウムイオン電池も発火・爆発の危険性があるのか…といえば、そうではありません。iPhoneが採用するのは図の下から2番目の「リチウムポリマー電池」で、こちらも充分に安全性の高い電池となっています。
理由② リン酸鉄リチウムイオン電池は長寿命
リン酸鉄リチウムイオン電池のもう1つの大きな特徴として「長寿命」が挙げられます。
リン酸鉄リチウムも含め、リチウムイオン電池は充電・放電(電気を使うこと)を繰り返すうちに『充電容量の減少』というカタチで劣化が現れます。
ポータブル電源の仕様諸元表に「サイクル:800回(80%)」や「サイクル:3000(80%)」等の記載がありますが、これがその電源の「寿命」を表しています。
これは『所定のカウント方法で充放電を800回、あるいは3000回繰り返すと、(おそらく)充電容量が当初(新品時)の80%ほどになっているはずです』と言う意味になります。ちなみに、サイクルを正しく言うと「充電サイクル」といいます。
では、リン酸鉄リチウムイオン電池の特徴である「長寿命」というのはどういう意味なんでしょうか。
電源における長寿命とは「充電容量の減少(=劣化)速度がゆっくりである」と言う意味になります。
分かりやすくいうと、所定(80%等)の容量まで減少するまでに長い時間がかかるということです。
実際、三元系リチウムイオン電源のサイクル数は、500回や800回が多く、まれに1000回と表示しているメーカーもありますが、リン酸鉄リチウムでは2500回、3000回が一般的、最新モデルでは3500回という製品も登場してきています。
電源の寿命を表す「充電サイクル」ってなに?
電池の寿命を表す「充電サイクル」は非常に誤解されやすいワードです。
「充電サイクル」とは、
- 充電器に繋いだ回数
- 100%の満充電になった回数
- バッテリーを使い切った回数
と思われがちですが、実は違います。
充電サイクルの正しい理解は、
『放電量の合計が100%になったら充電サイクル1回とカウント』です。
その意味は、例えば500Whの容量のポータブル電源があったとしてその電源の充電サイクルが『1000回(80%残存)』だった場合、放電量(容量の使用量)の合計が100%(この場合は500Wh)になるごとに、充電サイクルが1カウントされるということです。
補足すると、「放電」とは充電された電気を使うことです。
「放電量の合計が100%」とは、何回かに分けて使用した場合でも、使用量の合計が100&ぶんになったら充電サイクル1回とカウントするという意味です。
以下は、充電サイクルのカウントの仕組みを図解したものです。
100%に充電されたiPhoneを、昨日75%使って、今日25%使うと、合計で100%使ったことになり、この合計100%になった時点で「充電サイクル」が1サイクルとカウントされることを表しています。75%使用と、25%使用の間に75%の充電が挟まっても関係なく、放電量の合計が100%になることだけをカウントして1サイクルになります。
図はAppleサポートがiPhoneに採用されているリチウムイオン電池の寿命について解説したページからの引用ですが、三元系でもリン酸鉄でも、ポータブル電源のリチウムイオン電池も同様の方法で寿命をカウントしています(メーカーに確認済み)。
リン酸鉄リチウムイオン電池は充電サイクル3000回と表示する機種が多いですが、週に1回、容量の100%分を使い切るような使い方を続けた場合、7日間で100%=1回なので、充電策来るが3000回に至るのは21,000日=57.5年後ということになります。
メーカーがよく10年と言っているのは、1.2日(1日と4時間)≒1日で100%分を使い切るような使い方を続けた場合に容量が80%に減少します…と言う意味になります。
充電サイクル3000回超えたらどうなる?
では、ポータブル電源の取説に記載の「充電サイクル」に至ったらどうなるのかが気になりますね。
筆者所有のEcoFlow EFDELTAの充電サイクルは800回です。例えば、1260Whの容量を毎日100%使い切るような使い方をした場合、約2.2年(2年2か月ほど)後に充電サイクル800回に到達することになりますが、EFDELTAはどうなるのでしょう。どんな症状が出るのでしょう?
「家電を繋いでも動かなくなる」
「スマホを充電できなくなる」
「危険なので使わない方がよい」
そんなデメリットが生じそうな気がしますが、実は何も起こりません。
単に容量の減少(劣化)が進んで、充電しておける充電量がどんどん減るだけです。
『充電サイクル○○回(80%)』という表記には、書かれているだけの意味しかありません(どこにも不具合が出るとか、使えなくなるとは書かれていません)。単に「容量が80%まで目減りする」だけです。
その後も特に支障なく使い続けることは可能ですが、さらに容量の減少は進み、70%→60%→50%とどんどん貯めておける電力量が減って『実用性がなくなる…というのが劣化の症状』です。
しかも、充電サイクル○○回(80%)は、あくまで目安というか想定であって、必ずしも80%まで減少しない場合もありますし、逆にもっと劣化が進んで70%になってしまう可能性もあります(日々の充電方法や管理の仕方で大きく変わります)。
これをリン酸鉄リチウム電池(充電サイクル3000回)に当てはめてみると、もし毎日100%を使い切ったとしても8.2年(約8年2か月)後に容量が80%になる可能性があり、その後も容量は減少するがそのまま使い続けることができることになります。
さらに容量が減るまで使用し続ければ、もしかすると基板や配線といった他の部品や構造が劣化して別の不具合が生じる方が先かもしれません。
その辺りの「寿命」や「80%」についての見解を、4大メーカーに問い合わせた記事があるので、気になる方はご覧ください。
ポータブル電源の寿命には「容量」の影響が大きい
ここで問題です。
(A)容量500Whのリン酸鉄リチウムイオン電池採用で充電サイクル3000回のポータブル電源
(B)容量1,875Whの三元素リチウムイオン電池採用で充電サイクル800回のポータブル電源
(A)(B)いずれの寿命が長いと思いますか?
長寿命が特徴のリン酸鉄リチウムの(A)がより長寿命に思えませんか?
実は正解は『同じ』なんです。
検証するために電気使用量を定めましょう。(A)(B)いずれのバッテリーも『毎日(1日間)に500W消費する』ことにしましょう。
(A)のバッテリーは、1日間に500Wh使うと1日で全容量を使い切るので、1日で「充電サイクル」が1カウント進むことになります。3000回÷365=8.219≒8.2年後ということになります。
(B)のバッテリーは、1日間に500Wh使うと3.75日で全容量を使い切るので、「充電サイクル」1カウント進むのに3.75日かかることになります。800回×3.75日÷365日=8.219≒8.2年後となります。
いかがですか?意外と「目からウロコ」じゃないですか?
ここで注目すべきは「充電サイクルは≪%≫が基準」となっている点です。例えば500Whの電源と、1,875Whの電源の30%使用時の実際の消費電力量は異なります。当然ながら、元の容量の多い電源の方が同じ電力量を消費しても、その電源の容量に対する割合(%)は小さくなります。
このことから、ポータブル電源の「寿命」だけを考えるなら、単に充電サイクル数だけではなく、容量も加味して勘案すべきだということがわかります。
言い換えれば、購入した電源を少しでも長持ちさせたいなら、充電サイクル数だけでなく、充電容量の大きさも考慮すべき…ということになります。
もちろん、使う用途がないのに無暗に大容量電源を購入するのは無駄かもしれませんが、昨今では大規模災害発生の懸念や、電気料金高騰による節電対策として注目されていることを勘案すれば、やはり少しでも大容量の電源を検討すべきと言えるかもしれません。
三元系リチウムは危険で、リン酸鉄リチウムなら安全なのか
10年もの長寿命を望まなければ、別に三元系リチウムでも問題いないんじゃないの?
そう思われるかもしれません。
でも、三元系リチウムイオン電池を採用したバッテリーの発火が原因と見られる火災が毎年発生していることをご存知でしょうか。
こちらは東京消防庁がまとめた令和5年中に「リチウムイオン電池」の発火が原因と見られる火災の発生件数です。モバイルバッテリーを筆頭に、スマホや電動自転車のバッテリー、コードレス掃除機などと並んで、ポータブル電源でも7件の火災が発生しています。
東京消防庁管内で1年間に7件が多いのか少ないのかと言うことよりも、少なくとも三元系リチウムイオン電池は何らかの原因によって「発火する」という事実が重要です。
こちらは、三元系リチウム電池、リン酸鉄リチウム電池、半固体リン酸鉄リチウム電池のそれぞれに釘を刺す実験ですが、結果は明らかに三元系リチウム電池のリスクが高いことを表しています。
この実験を見ても「リン酸鉄系」の方が安全性は高いのは確かですが、だからといってすべての三元系電池が絶対に手を出すべきではないほど危険ではないはずです。EcoFlowもJackeryもAnkerも、今まで危険なことを知りながら、素知らぬ顔をして三元系リチウムイオンのバッテリーを製造・販売してきたのでしょうか?そんなことはないはずです。
肝心なのは、きちんとした製品かどうか…ではないでしょうか。1つの「拠りどころ」として、日本法人を持つような「EcoFlow・Jackery・Anker」といった名の通ったメーカーの製品をきちんと保証付きで購入することなどが挙げられます。
逆に言えば、海外からAmazonに出品しているような名も知れぬメーカーのリン酸鉄バッテリーが、EcoFlow・Jackery・Ankerの三元系リチウムバッテリーより安全だと言い切れるのでしょうか?
要はリン酸鉄リチウムか、三元系リチウムか…ではなく、そのメーカーが信頼に足るかどうか、いざという時に日本国内の法に則って対応してくれるかどうかではないでしょうか(下記報道参照)。
自分の実体験を言えば、2020年に発売された「EcoFlow EFDELTA」を現在でも使っていますが、異常な発熱もなく安定して日々使用している…ということも事実です。
ポータブル電源も日本製がいい?海外製はNG?
ポータブル電源に限らず様々な分野で日本製品が安心であることは確かですが、ポータブル電源に関しては日本製はほぼ望めません。
ポータブル電源の主要製造メーカーの多くは海外企業でありその拠点の多くは中国にあります。人気筆頭のEcoFlowも、AnkerもBLUETTIも中国の企業ですし、老舗Jackeryは元はアメリカ企業ですが生産拠点は中国です。
あくまで筆者個人の考えですが、ポータブル電源については特に国産にこだわる必要はないと考えています。中国企業の製品でもきちんとした性能・機能・品質を備えた製品はたくさんあります。とはいえ、中国製なら何でもいいのかというとその辺りは危険性もないとは言い切れません。
昨今のアウトドアブームに加え、災害時の備え、さらには電力需給逼迫時の節電対策向けにポータブル電源+ソーラーパネルの購入を検討される方が増えていますが、ポータブル電源は決して安い買い物ではないためどうしても「できるだけ安く購入したい」と考えるのは当然のことです。
〇mazo〇等のショッピングモールには海外の名も知れないメーカーの製品が激安価格で販売されて非常に魅力的に映りますが、こんな事例もあります。
これ以外でもスマホのバッテリー、モバイルバッテリー、ポータブル電源のリチウムイオン電池の発火や爆発の事例は少なくありません。
そうした事もあって電源としてより安定している『リン酸鉄リチウム電池』への転換が進んでいる面もありますが、ニュースのように出火原因が「バッテリー内部の絶縁体の劣化によるショート」なのであれば、リン酸鉄リチウムでも三元素リチウムでも関係ありません。
さらに言えば、災害対策などで充放電サイクルが長い場合、リン酸鉄リチウムに置き換わって長寿命となった結果、何十年も下手をすると100年近くもの電池寿命が持ってしまうケースもあり得るとすれば、電池は問題ないとしてもその他のポータブル電源を構成する部品や部材が劣化しないのか等に不安を感じる部分もあります。
『アマゾンの問い合わせフォームを通じメーカーに連絡を取ったが、メーカー側は電話での対応に応じず、日本の法律には規定のない「家財損壊証明書」の提出を要求してきた』という記事から推察すれば、そのメーカーは日本法人を持たないメーカーのようです(日本法人があればAmazonを通す必要はなく、日本法人に直接連絡できるはずです)。
日本法人を持たない海外メーカーの中にも責任ある製品作りをしているメーカーもあるのかもしれませんが、少なくともショッピングモールで商品説明を読むだけではユーザーには見えません。そしてつい安さに釣られやすいのも事実でしょう。
しかし日本の現行法では販売者(この場合Amazon)の責任は問えないため、日本法人のない海外メーカーは容易に「とんずら」しやすい状況にあると言えます。というか日本の法律が及ばないところにいるわけです。
ということは逆を返せば、日本の現行法が及ぶ企業であることが原則だということになります。それはつまり「日本法人」と言うことだと思います。「日本法人」は日本の法律が適用されるので、最低限日本法人を設立しているメーカーであることを確認すべきです。
割安な価格で購入できるに越したことはありませんが、何か問題が起こった際にはそれなりのリスクも背負うことになる場合もあることは念頭に製品を検討すべきでしょう。
ポータブル電源を選ぶ際には、まずよく知られたメーカーであることが大前提です。EcoFlow/Jackery/Anker/Bluettiの4大メーカーであれば日本法人も設立していますし、サポート体制も整っています。他社製品を選ぶ場合でも、せめて日本法人を設立していることを条件に選ぶべきと考えます。日本法人があれば絶対安心かと問われれば保証の限りではありませんが、少なくとも日本国内で地に足をつけて企業活動を行おうという意思と受け取れるのではないか…と思います。
半固体リン酸鉄リチウムというさらに安全性の高い選択肢
昨今では、三元系より安全性が高いとされてきたリン酸鉄リチウム電池よりも、さらに安全性を高めた「半固体リン酸鉄リチウム電池」を採用したポータブル電源を選択することが可能になっています。
「半固体電池」とは、バッテリーの電解質を、従来の「液体」から「ゲル」状や「粘土」状の『半固体』とすることで、さらに安全性を高めた電池です。
前出の動画にもあるように、温度上昇と発煙しか起こらないリン酸鉄リチウム電池は、急激な温度上昇や発火・爆発が起こる三元系リチウム電池よりもはるかに安全性が高い電池と言えますが、さらに発熱も発煙もない半固体リン酸鉄リチウム電池は、現時点で考えられる最も安全なポータブル電源であると言えそうです。
※半固体リン酸鉄リチウム電池採用のDABBSSONポータブル電源の実機レビューをご参照ください。釘刺し実験動画も視聴可能です。
おすすめリン酸鉄リチウムバッテリー
本項では、筆者が現時点でおすすめしたいポータブル電源を4機種選んでみました。
DABBSSON DBS1400 Pro(半固体電池採用)
三元系リチウム電池はもちろん、従来、安全&長寿命のポータブル電源として各社が競って採用してきたリン酸鉄リチウム電池よりもさらに安全性の高いポータブル電源として登場したのが「半固体電池」採用のDABBSSONのポータブル電源です。
電池に釘を刺すという暴挙に及んでも、温度も上昇しなければ、発火や爆発はもちろん、発煙さえ認められなかったという、ぶっちゃけ現時点で最も安全性の高いポータブル電源用電池だと言えます。
さらなる上には「固体電池」がありますが、固体電池は大きく重く高価なため、携帯性やコンシューマーユースを勘案した場合に、現時点で最も優れた安全性を担保できる最良の選択肢は「半固体電池」ではないかと思います。
画像のDABBSSON DBS1400Proは、1382Wh容量のミドルクラスのポタ電ですが、専用の拡張バッテリーを繋ぐことで約5000Whに拡張可能で、さらに本体を2台並列接続して各々に拡張バッテリーを接続すると、最大で約11kWhの超大容量を確保することが可能です。
また定格出力は拡張バッテリーを接続した状態でも不足を感じにくい2400Wを確保、さらに定格出力を上回る消費電力の家電を駆動可能な「P-Boost」機能をONにすれば、3000Wまでの家電を定格出力内で動作させることも可能です。
さらに、本体の並列接続や拡張バッテリー接続によって、容量だけでなく、定格出力も増加する…という他社製品には見られない独自の機能を備えています。本体並列接続+拡張バッテリー接続の場合、2400Wの定格出力が4400Wにまで拡大されます。
ポータブル電源が欲しいが安全性の点で不安がある…という場合には、半固体リン酸鉄リチウム電池採用のポータブル電源を候補に検討してみてはいかがでしょう。
Jackery 1000 Plus
続いて、1000WhクラスでもJackeryの新しいラインナップから「1000Plus」を選びました。
『Jackery 1000 Plus』は、「2000Plus」に続いて登場したJakceryのリン酸鉄リチウム電池採用の新世代ポータブル電源の第2弾で、容量1,264Whに対して定格2000W/瞬間最大4000Wの高出力電源として登場しました。
2000Plus同様に、容量を拡張した際にも出力不足とならないよう定格出力は1クラス上のパワーが与えられています。他社の容量2000Wh/定格2000Wクラスの電源が25万~30万円の価格帯であることを勘案すれば、定格出力2000Wで通常価格168,000円はかなり割安な設定と言えます。
良心的だな…と感じるのは、1000Plusと拡張バッテリー「Battery Pack 1000 Plus(1,264Wh/117,600円)」をセット購入すると合計285,600円となり、他社容量2000Wh/定格2000Wクラスと同等価格に収まるため、拡張バッテリーを別途後日購入しても、負担額は容量2000Wh/定格2000Wクラスと同等です。
つまり、「1000Plus」なら、容量2000Wh/定格2000Wクラスの電源を、まず168,000円で定格出力のぶんだけ先行して購入できる…というわけです。
話が分かりにくいかもしれませんが、通常、2000Wh/2000Wの電源を購入しようと思えば、最初から25~30万円のコストがかかるが、1000Plusなら、最初は168,000円のコストで定格2000Wを確保することが可能で、後日117,600円の追加で残りの容量1264Whを追加し、2000Wh/2000Wの電源を完成させることが可能…というわけです。それでいて最終コストは他社2000Wh/2000Wクラスの25~30万円以内に収まる…というわけです。
※「Jackery 1000 Plusはいいですよ~」という記事です。宜しければご覧ください。
800Whクラス~Bluetti AC70
容量800Wh弱、出力800W/最大1600W、X-Boost時1000Wのスペックで、10万円以下のクラスで人気となっている「EcoFlow RIVER 2 Pro」ですが、ついに強力なライバルが登場してきました。
実はこのクラスは2023年春に登場以来、「RIVER 2 Pro」の独壇場でした。唯一競合するのはBluetti EB70Sだけでしたが、発売からかなり時間が経過しているため、昨日でも性能でも及ばない現実がありました(とはいえ筆者は気に入って使っていますが)。
そのEB70Sの後継として、2023年10月に登場したのがBluetti「AC70」です。
実はRIVER 2 Proは、拡張バッテリー機能を廃止したり、X-Boostで対応できる消費電力を引き下げるなど、初代モデルに比べて「縮小」イメージがありますが、AC70は逆に全モデルをパワーアップして登場し、俄然人気となっている新型ポタ電です。
前モデルでは採用がなかった「拡張バッテリー」に対応し、「電力リフト(X-Boostと同様の機能)」も新採用で最大2000Wまで対応、質感も大幅にアップして魅力満載の小型ポタ電として登場してきました。
容量716→768Wh、定格出力800W→1000W、瞬間最大出力1600W→2000W、電力リフト新採用2000Wまで対応、スマホ遠隔操作新採用など、このクラスとしてはかなり高スペックを与えられています。最近のBluettiは力が入っていて、非常におすすめです。
400Whクラス~BLUETTI AC60
充電容量400~500Whクラスは、モデル分布の薄いクラスです。
初代RIVERシリーズでは「RIVER Max」と、Bluetti EB55がそのクラスの代表モデルです。昨年(2022年)にはRIVERが「2」に進化したのに対し、「EB55」は旧モデルのまま販売が継続されていましたが、ここへきてようやくBluettiにも新モデルが登場しました。
AC60はBluetti伝統のリン酸鉄リチウムイオンバッテリーを採用し、充電サイクルは3000回、保証期間は6年間という長寿命モデルとして登場しました。
AC60の容量は403Whで、拡張バッテリー「B80」を最大3台接続して2,015Whの容量を確保できます。容量は拡張バッテリー依存ということで本体の容量は抑え気味…という点は最近のトレンドに則っています。
出力は定格600W/最大1200Wで、電力リフトで最大1200Wまでの家電が使用可能となっています(出力や電力リフトの数値はEB3Aと同等)。
出力値はもう少し(800W程度)あっても良かったか?と思いますが、このクラスの電源が拡張バッテリーで最大2000Wh超の容量を持てるのは大きな特徴です。実際の出力は抑えられてしまいますが、電力リフトで最大1200Wまでの家電を使えることと相まって、普段使いでの使い勝手はかなり良さそうです。
従来のBletti製リン酸鉄リチウムバッテリーの弱点だった「充電サイクル」と「保証期間」も3000回+6年保証にスペックアップしています。6年保証とはこの製品に並々ならぬ自信がありそうです。
「AC60・B80」のデモ機をお借りして、実機を使用してレビュー記事をアップしています。容量やスペックも大きな進化を見せていますが、何よりも驚いたのは、その質感の向上です。1クラスも2クラスも上位のモデルと思える厚みがあり高級感のある外装に注目です。
リン酸鉄リチウムバッテリー まとめ
今回は、リン酸鉄リチウムイオンバッテリーのおすすめポイントを深堀りしました。
三元系リチウムイオン電池は絶対にNGとは言い切れませんが、安全性を重視するならリン酸鉄リチウム電池採用のポタ電がおすすめの選択肢になりますが、昨今では、さらに安全性が高く寿命も15年に及ぶ、半固体リン酸鉄リチウムイオン電池採用のポタ電が、比較的リーズナブルな価格で入手可能になっています。
スペックを重視するのか、メーカーの信頼性を取るのか、最新モデルなのか、定評のある定番モデルなのか、あるいは絶対的な安全性という面で「半固体リン酸鉄リチウム」なのか、選び方によって出てくる答えは様々ですが、日本法人を持つメーカーの製品がおすすめである点は共通です。
※もっと細かくクラスごとに比較しながら選びたい場合には以下の記事をご覧ください
それでは今日はこの辺で。
コメント
コイケさん
こんにちわ。
>メーカーがNGを出している以上は自己責任ということですね
仰る通りです。その辺は致し方ないところですが、うまくゆけば「めっけもん」ですね^^
いまくゆくことをお祈りしています。
貴重なご意見ご報告、他の読者さんにも参考になると思います。ありがとうございました。
ご丁寧にご回答いただき、ありがとうございます!
DELTA2もR600も入力が60Vまでですが、
メーカー回答は
DELTA2は、直列接続できます。
R600は、直列接続できません。
と回答がそれぞれ分かれているのは、各社の基準としている部分が違うのかもしれません。EcoFlowのいう分圧ということを考えるとR600も接続可能ではないかと思うのですが、メーカーがNGを出している以上は自己責任ということですね。
車体ルーフのパネルが動作電圧からするとポタ電の入力範囲内、開放電圧では上回っているという記事の内容も含め、自己責任ですが僕もいけるんじゃないかなぁと思っています。
並列での接続またはポタ電の容量アップも検討してみようかと思います。
コイケさん
こんばんわ。ブログへのご訪問&コメントありがとうございます。
ソーラーパネルのご質問ですね。
わたしは某メーカーのサポートに問い合わせた際に「開放電圧」ではなく「動作電圧(Vmp)」で判断せよと教わりましたので、それに従ってブログ記事を書いております。
わたしも、コイケさんと同じく、「R600」でVmp:25.4Vのパネルを直列で接続できると思います。
少なくともわたしはそう教わりましたし、実際に開放電圧では上回ってしまう車体ルーフのBougeRV製200Wパネル(開放31.5V、動作電圧25V)で、Bluetti EB70S/EB3Aを充電していますが特に問題なく使えています(EB70SもEB3Aも12V-28V,Max200Wです)。もしかすると目に見えない部分で劣化している可能性はありますが、目に見える部分での影響はありません。
そういった意味で、Vmpで判断されているコイケさんのお考えには同調いたします。
ただ、問題は「理屈」ではないと思うんです。
たかが1つのブログ上で理屈として何が正しいかを論争しても無意味で、結局は、その製品のメーカーがどう考えどう発言するか…じゃないかと思います。
お問い合わせになって、「ダメです」「開放電圧で判断してください」と言われれば、いくら、「他社は違う」あるいは「某ブログではそうは言っていない」…と主張したところで、その製品の開発製造販売会社が「だめだ」と言っているものをどうあがいても覆せません。
お手持ちのソーラーパネルが「R600」で使えるかどうかを問い合わせた先がALLPOWERSであるなら、ALLPOWERSが「だめ」と言っている以上、従うしかないと思います。
メーカーが言うように、1枚接続で充電される方がよろしいと思います。もし何かの故障や不具合が起こった場合、メーカーの指示や言い分を順守していない場合、保証の対象にならない等の不利益が生じる可能性があります。
それにメーカー各社で、開放電圧だというメーカーもあり、Vmpでいいというメーカーもありで正直、そのメーカーがどのように考えているかによって回答はちがってきます。各々のメーカーなりの考えあってのことと思いますので、そのメーカーの製品を使用するのであればメーカーの言うことを守るべきかと思います。問い合わせに技術者が直接回答していることはないと思います。ということは会社の考えに従ったマニュアルに基づいて回答しているはずですので、そこを突っ込んでもサポートにも分からないのではないでしょうか。「ウチは○○です」とした言いようがないんじゃないでしょうか。
もしR600でどうしても2枚使いたいのであれば並列接続を検討されては如何でしょう。
これは先ほどとは別のポータブル電源メーカーから教わったことですが、そのメーカーのポータブル電源には逆流防止機能が搭載されているので、別途逆流防止ダイオードを配線に噛ませる必要はないとのことでした。
ALLPOWERSに並列接続は可能かを合わせて、R600に逆流防止機能は搭載されているかを問い合わせてみては如何でしょう。
このあたりはかならず電源の方のメーカーへお問い合わせの上でご判断ください。
余談ですがRは出力は大きめですが、容量は299Whしかありません。
もちろん用途によっては使い勝手のよい電源ですが、使用する電力量が多めの場合は容量不足が心配です。
お手持ちの220Wパネルで70%(154W)の発電ができた場合、約2時間で満タンになってしまう容量です。
せっかく発電量の多いパネルをお持ちなので、500~600Whクラスの電源であれば3~4時間と1日の日照量でちょうど満タンになるぐらいの蓄電ができそうです。
あまりお役にたてなかったかもしれません。
以上よろしくお願いいたします。
突然すみません!
ブログ、色々と参考にさせていただいてます!
自宅に京セラのソーラーパネルが2枚余っており、何かに活用できないかと思い太陽光で発電してポタ電に充電できれば!と素人ながら色々と調べているところです。
ブログの中で「入力電圧」>「出力電圧」が大前提と書いてあり、ソーラーパネルの出力とポタ電の入力の関係について、調べていた中ですごく分かりやすく、ぴったりの内容だったので助かりました。
ブログの内容からすると接続に問題がないと思うのですが、組み合わせ的に問題点なさそうなのか相談に乗っていただけますと助かります。
手持ちのソーラーパネル↓
京セラパネル(KHM220P-3MD6CG)
最大出力(Pm):220W
開放電圧(Voc):31.5V
短絡電流(Isc):9.10A
最大出力動作電圧(Vpm):25.4V
最大出力動作電流(Ipm):8.67A
最大システム電圧:450V
2枚を直列で繋ぐと
開放電圧でみる場合、31.5×2=63.0V
動作電圧でみる場合、25.4×2=50.8V
EcoFlowのDELTA2を当初検討していました。
入力規格:ソーラー充電入力
最大500W、11〜60V DC、15A
メーカーにも直列での接続が可能か問い合わせたところ、
(メーカー回答:一部抜粋)
ソーラーパネル2枚を直列で繋ぐことができます。2枚を直列で繋ぐ場合は分圧しますので、 開放電圧は63.0V未満の状態となります。
との回答であったため、安心したのですが「分圧」というのが???でした。
また、金額的にもいいお値段であったため、こちらで紹介されていたALLPOWERSのR600を1台目として再検討中です!
こちらも、12-60V 12Aのため問題ないのでは?とメーカーに問い合わせましたところ、
(メーカー回答)
電圧電流につきましては開放電圧、電流を参考にすることを推奨しております。記載いただきましたソーラーパネルでございますが400W以上になりR600の規格を超えて過電圧、過電流保護が作動すると推測されます。 また、規格以上のものを接続すると故障する可能性がございますので一枚での使用をお願い致します。
と回答がきてしまったため、助言をいただけますと助かりますm(_ _)m
動作保証等から同一メーカーのパネルが望ましいとは思いますが、、、