つい先日発売になったばかりの『Jackery 1000 Plus』に注目しています。今回は筆者が注目する「1000 Plus」の特徴やメリットについて掘り下げます。
『Jackery 1000 Plus』は、容量1068Wh・定格2000W/最大4000W出力を備えた、Jackery初のリン酸鉄リチウムイオン電池採用の新世代ポータブル電源です。筆者が注目したのは、定格出力値と容量のバランスです。
Jackeryと言えば世界初の三元系リチウム電池採用のポータブル電源を世に送り出した老舗メーカーとしてつとに有名ですが、それ故に、リン酸鉄リチウムイオン電池採用には慎重で、大手メーカーとしてはほぼ最後発となりました。
いよいよ発売されたPlusシリーズのトップバッターは「2000 Plus」、2番手が「1000 Plus」でしたが、筆者は「1000 Plus」に特に注目しました。それはなぜなんでしょうか。
Jackery 1000 Plusのスペック比較
メーカー | EcoFlow | Anker | Bluetti | Jackery |
機種 | DELTA2 Max | 767 | AC200P | 1000Plus |
発売日 | 2023/05 | 2022/10 | 2021/12 | 2023/07 |
通常価格 | 254,100円 | 299,900円 | 219,800円 | 168,000円 |
採用電池 | リン酸鉄 | リン酸鉄 | リン酸鉄 | リン酸鉄 |
充電サイクル | 3,000 残存80% | 3,000 残存80% | 3,500 残存80% | 4,000 残存70% |
容量 | 2,048Wh | 2,048Wh | 2,000Wh | 1,264Wh |
定格出力 | 2000W | 2000W | 2000W | 2000W |
瞬間最大出力 | 4000W | ? | 4800W | 4000W |
AC端子 | 6 | 6 | 6 | 3 |
USB-A | 4 | 2 | 4 | 2 |
USB-C | 2 | 3 | 1 | 2 |
DC出力 | 5521×2 | – | 2 | – |
シガーソケット | 1 | 2 | 1 | 1 |
AC入力 | X-Stream 1500W | 1200W | 500W | 1500W |
ソーラー入力 | 1000W | 960W | 700W | 800W |
定電力機能 | X-Boost 2700W | – | – | – |
拡張バッテリー | 〇 最大6144Wh | 〇 最大4096Wh | 〇 最大8144Wh | 〇 最大5000Wh |
スマホ操作 | 〇 | 〇 | – | – |
ワイヤレス充電 | – | – | 〇 | – |
UPS | 30ms | 20ms | × | 20ms |
サイズmm | 497x242x305 | 525x395x250 | 420x280x386 | 356x260x283 |
重量 | 23.0kg | 30.5kg | 27.5kg | 14.5kg |
保証期間 | 5年 | 5年 | 4年 | 5年 |
容量単価 | 124.1円/1Wh | 146.4円/1Wh | 109.9円/1Wh | 132.9円/1Wh |
出力単価 | 127.1円/1W | 150.0円/1W | 109.9円/1W | 84.0円/1W |
こちらは、定格出力2000Wクラスのポータブル電源のスペック比較表です。
この表の中で「Jackery 1000 Plus」を中心に以下の3点に注目してください。
- 通常価格
- 容量
- 定格出力/瞬間最大出力
そして、これらの要素を検討する際に忘れてはならないのは
- 『容量は後から拡張できるが定格/最大出力は拡大することはできない』
です。
以上の条件で導き出される答えは以下の通りです。
これは、定格出力2000Wの電源の多くは2000Whクラスの容量が組み合わされており、価格は25~30万円程度が相場であるが、「1000Plus」は、定格出力は2000Wを確保しながらも容量を6割程度に抑えることで、価格を唯一10万円台に留めている…ということになります。
つまり、後から拡張可能な容量については、専用拡張バッテリー(117,600円)を追加することで、他社製品と同等の2,000Whに拡大することが可能ですが、本体のみで2000Wh容量の他社電源を購入するのと変わらないコストで本体+拡張バッテリーを購入可能ということになります。
今回の1000 Plusはこの点に注目しました。
何が言いたいのか…というと、1000Plusは、後から拡大できない定格出力は2000Wを確保しながらも本体コストを168,000円に抑えています。もし本体容量で足りる場合には168,000円以上の出費は必要ありません。
でももし、容量が不足だと感じれば拡張バッテリーを追加購入することで2,528Whに拡大できますが、拡張時のコストは「本体+拡張バッテリー1台=285,600円」となり、他社2000Wh/2000Wクラスの電源と同等の金額に収まるのです。
これまでの拡張バッテリーは、拡張バッテリーを余分に購入することでコストが割高になっていましたが、1000Plusでは、2000Whの本体1台分とほぼ同じで済む…ということです。
初期コストを抑えつつ高出力電源を購入でき、後日追加で容量を拡張しても、合計コストは他社製品より割高にならずに済むという点が素晴らしい…と思う次第です。
拡張バッテリーは体の良い「値上げ」ではないのか
そもそもポータブル電源各社がなぜ「拡張バッテリー」の仕組みを取り入れたいのでしょうか。
それはリン酸鉄リチウム化によって長寿命となり販売数や売り上げが減少してしまうためでしょう。
充電サイクルは500~800回の三元系リチウムイオン電池であれば、3~5年ごとに買換え需要がありますが、長寿命化したリン酸鉄リチウムイオン電池採用のポータブル電源は、使い方によっては10年以上も買い替え需要が発生しないことになるので、メーカーとしては儲からない商品です。
そこで、リン酸鉄リチウムイオン電池では本体容量を抑えておいて、容量不足は「拡張バッテリー」で補う…という手法を取ることで、電源本体とは別に拡張バッテリーの売り上げも見込めますし、拡張バッテリーを2個・3個と買って貰えるかもしれません。
もちろん、拡張バッテリーの本来の役割である「充電容量の拡張」という役割は重要で、災害対応などの観点から見れば大容量を確保することは重要です。一方で外出時などは本体のみで切り離して持っていけるメリットもありますので、拡張バッテリー自体を否定するものではありません。
けれど、これまでの拡張バッテリーの仕組みを取り入れた製品の多くは、大容量の本体単体を購入する場合と比べて、同じ容量を得るのにコストが割高・割増になる傾向がありました。
拡張バッテリーの採用は、三元系→リン酸鉄に移行することで生じる売り上げ減・収益減を補おうという意図があるとすれば、これは実質的な値上げになっていないか…という懸念を感じます。
もちろん本体のみで事足りるユーザーであれば、初代EFDELTAよりも割安に長寿命の電源を購入できることになりますし、拡張バッテリーの仕組みがなければ容量拡大もできないのは確かですが、「EFDELTA後継」を名乗る以上、購入者は初代EFDELTAの1260Wh程度が必要な人である可能性が高く、容量を縮小している分だけ「容量不足」を感じるケースは多いものと想像できます。
拡張バッテリーの本来のメリットが感じられる1000Plus
Jackery 1000 Plusの価格を含めたスペックを見た時に感じたのは、「実質値上げを感じずに拡張バッテリーのメリットを享受できる」ということでした。
前々項で見たように、1000Plus本体の価格は、競合他社製品の6割程度の設定です。
そして本体の充電容量も競合他社製品の6割程度です。
Jackeryの1つ上のクラス「2000 Plus」は2,042Whで285,000円(容量単価139.6円)で、1000Plus+拡張バッテリーの容量/価格とほど同等なので、2000Plusで大容量を一気に購入しても、1000Plus+拡張バッテリーで分割して購入してもコスト負担はほぼ同じ…ということになります。
実は、EcoFlowの「DELTA2+拡張バッテリー」と「DELTA2 Max」でも、容量/価格はほぼ同等で、『容量を一気に買っても分割して買ってもコストは同じ』という点ではJackeryと同様です。唯一異なるのは、1000Plusの定格/最大出力が2000W/4000Wだという点です。この定格出力が1つ上のクラスの2000Wを確保していることが1000Plusの「肝」ではないかと思います。
定格出力2000Wクラスのポータブル電源を4割安い価格で購入し、容量が足りるならそのままで良し、足りなければ残り4割分の117,600円を負担して容量を拡張すれば良い、その場合の合計金額は本来のクラス価格と同等で割高にはならない…ということです。
2000Whの容量を手に入れるコストはほぼ同じだが、容量6割で足りるなら購入額も6割分の負担で済む。6割容量では足りずに拡張バッテリーを購入した場合でも、割安になっていた4割分を追加するだけなので、合計10割負担に過ぎず割高なコスト負担にはならないわけです。
これが本来の拡張バッテリーの姿なのではないか、そんな気がします。
拡張バッテリーを購入しても割高なコスト負担にならない「Jackery 1000 Plus」は、拡張バッテリー本来のメリット(容量を追加拡大できること)を具体化した初めての電源かもしれない…と思った次第です。
非常にコスパの良いポータブル電源ではないかと思います。
それでは今日はこの辺で。
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