先日、リン酸鉄リチウムイオンバッテリーに換装したサブバッテリーが、想定以上の良い結果をもたらしているので報告します。

新車から5年経過したアルトピアーノのサブバッテリーを、ディープサイクルバッテリーからリン酸鉄リチウムイオンバッテリーに換装しましたが、想定以上のメリットに驚いています。サブバッテリーのリン酸鉄リチウム化はもっと推奨されるべきでは?と思い、記事化してみることにしました。
新車から5年が経過した我が家のアルトピアーノに搭載のサブバッテリーは、電子レンジを使おうとすると、「ピーピー」と警告音が鳴って『電力不足』を訴えるようになっていました。これはインバーターからの「電圧低下」に対する警告音で、原因は劣化=容量減少による電圧低下と考えられます。
自分的には、そもそもアルトピアーノの購入には、ドライブ先などで車内の対面シートで地元グルメなどの飲食や、休憩時のコーヒー&おやつ等が大きな目的の1つでしたので、サブバッテリーで電子レンジた電気ケトルを使うことが前提して考えていました。
ところが、5年経過したアルトピアーノのサブバッテリーは、思うように電力を蓄電・給電できなくなってきていました。もともとディープサイクルバッテリーは取り出せる電力量が小さく、次第にサブバッテリーを使わずにポータブル電源を持ち込むのが当たり前になっていました。
「サブバッテリー、新しくしなきゃな」
「リチウムイオンバッテリーはどうなんだろう」
等と考えていて、とある事情からLiTime(旧AmpereTime)製「12V 100Ah」バッテリーへの換装が実現しました。
いざ換装してみると、想定していたメリットもさることながら、まったく想定外のメリットが大きく驚きました。その辺りを含め、換装約2週間が経過した時点での、リン酸鉄リチウム化によるメリット・デメリットについてレポートしたいと思います。
※実際の換装作業については以下の記事をご覧ください。
リン酸鉄リチウムイオン(LiFePO4)バッテリーのメリット

アルトピアーノのサブバッテリーシステムに採用されていたバッテリーは、『PowerSonic PS-121000』というディープサイクルバッテリーでした。
- 実際に使用できる電力量が増加する
- 安定性・安全性が高い
- 長寿命
- 充電管理が容易
- 大電力放電に強い
- 低コスト
- DIYで換装できる
- 軽量化
昨今では、サブバッテリーにリチウムイオン電池を採用するケースが増加していますが、ディープサイクルとリチウムイオンでは幾つかの大きな違いがあり、この1つ1つがリチウムイオン電池採用のメリットとなります。
今回換装したのは『LiTime 12V100Ah』バッテリーで電池はリン酸鉄リチウムイオンを採用していますが、リン酸鉄リチウムは、リチウムイオン電池と比較して、安全性や寿命(充電サイクル)などの点でアドバンテージを持った電池です。

換装メリット①~実際に使用できる電力量が増加する
ディープサイクルバッテリーは、電池内に貯めた電気を使えば使うほど『電圧が下がる』という性格を持っています。
例えば12V100Ahのバッテリーは12V×100Ah=1200Whの電力を蓄えていますが、使用してゆくうちに電圧が下がり、11Vを下回るとインバーターの稼働可能電圧を下まわってしまい、インバーターが自動停止してしまうため、実際には容量の60%程度しか利用できません。
リチウムイオン電池は、劣化の問題を考えなければ「容量0」まで使えるので、容量の100%を使い切ることができます。劣化を考えて残量10%程度で留めた場合でも、90%まで使用することができます。
この使用量の違いは、リン酸鉄リチウムイオンにも同じことが言えるので、同じ容量(例えば100Ah)を持つ場合でも、リチウムイオン電池(リン酸鉄含む)はディープサイクルバッテリーに比べて実際に使える電力量が多くなります。
実際、LiTime12V100Ahバッテリーの取説には「推奨定電圧切断電圧」として10.8Vと記載されており、その時の充電容量は『1%』に相当します。つまり、LiTimeとしては容量99%まで使用可能としていることになります。
実用上でより多くの電力を使えることはリン酸鉄リチウムイオン電池への換装の大きなメリットと言えます。

100Ahのディープサイクル電池は「新品」でも容量の60%(≒720Wh)しか使えませんが、購入から数年経過して劣化による容量減少が起きていれば、実際に使用できる電力量はさらに少なくなります。半分以下になっているかもしれません。それに比べ、最大99%まで使えるリン酸鉄リチウムイオン電池は、同じ100Ahでも99%≒1188Wh程度まで使用できることになります。その差468Whは、中型クラスのポータブル電源1台分の違いとなる計算で、かなり大きな差です。
換装メリット②~安定性・安全性
ディープサイクル電池を充電する際には微量な水素ガスが発生します。
アルトピアーノに採用の「PowerSonic PS-121000」は密閉タイプなので、水素ガスを吸着する触媒を使用して外部に漏れない仕組みを採用していますが、電流が大きい場合には吸着し切れずバッテリー内の圧力が高まり爆発の危険があるため、「防爆弁」を設けてガスを逃がす仕組みになっています。
つまり、場合によっては車内に水素ガスが放出される可能性がある…ということです。
これに対してリチウムイオン電池は水素ガスが発生しないのでその点では安心ですが、また別の面での心配があります。リチウムイオン電池は、エネルギー密度が高く急速な充放電が可能という点が特徴ですが、その分、熱暴走しやすく発火・爆発の危険性を伴います。

同じリチウムイオン電池の中でも、最も電池として安定していて熱暴走を起こしにくいのがリン酸鉄リチウムイオン電池です。約220℃で熱分解を起こす三元素系リチウムに対して、約600℃まで熱分解を起こさないリン酸て売リチウムはより安全性が高いと言えます。
換装メリット③~長寿命

ディープサイクル電池が400~500回のサイクルで劣化が現れるのに対して、三元素系では500~1000回程度、リン酸鉄リチウムイオンでは3000~4000回と、圧倒的な長寿命を誇ります。
毎日フル放電したとしても、4000回÷365日≒11年間の寿命を持っている計算です。実際にはさらに長期間の寿命を持っています。ただし、車自体やサブバッテリーシステムの他の機器や配線がそれだけの期間持つかどうかは疑問ですが。
ただ従来のディープサイクル電池は、3~5年で寿命となり交換を余儀なくされることを考えれば、一度、リン酸鉄リチウムイオンバッテリーに交換すれば、おそらくクルマの買換えが先にくるほどの寿命を手に入れられることになります。
実際に、我が家のアルトピアーノは2017年9月登録で、2023年1月に換装していますので、サブバッテリーの寿命は5年と4か月だったことになります。
換装メリット④~充電管理が容易
ディープサイクルバッテリーは、満充電での保管がベストです。満充電以外の状態で放置すると劣化が進んで容量を大きく減じる原因となります。
例えば、車中泊でサブバッテリーを酷使した後、あまり距離を走らないまま車を駐車して数日間エンジンをかけない…などという場合を指します。走行充電による補充電が不完全で満充電にならないまま放置されてしまいった場合は劣化ダメージは小さくありません。
それに対して、リチウムイオンバッテリーはそうした心配がほとんどなく、30%でも70%でも満充電でない状態での保管も問題ありません。逆にリチウムイオン電池の性格を考えると、満充電・フル放電は避けるべきです。
言い換えると、ポータブル電源と同じような感覚で取り扱える点で管理が容易と言えます。
換装メリット⑤~大電力放電に強い
バッテリーは使用中(放電中)に電圧が下がります。
ディープサイクルバッテリーではで夏低下が大きいため、電子レンジや電気ケトル、コーヒーメーカー、ホットプレートなど消費電力の大きな家電をした際の電圧の下降が大きく、インバーターが自動停止してしまって使えない場合があります。
リチウムイオンバッテリーは家電使用中でも比較的電圧が安定しているため、安心して消費電力の大きな家電を使用することができます。
実際にこの2週間で何度か車内で家電を使うチャンスがありましたが、電子レンジも電気ケトル(1000W)も問題なく動作し、「ピーピー」の警告音も鳴りません。容量残の管理も容易で、自分的には13.0Vを割り込まないように使うように決めているので、その電圧まで懸念無く使えるのが気楽でよいです。

ただし、ポータブル電源などでも容量残量が少ない時に消費電力の大きな家電を動かすと『overload』となって放電をストップする場合があるので、リチウムイオン電池なら必ずしも大丈夫とは言い切れません。
換装メリット⑥~低コスト
「コスト」に関しては、実際のバッテリーの価格としては従来のディープサイクルバッテリーの方が割安ですが、リン酸鉄リチウムイオンバッテリーは長寿命による買い替え頻度の少なさがコスト削減に繋がると言えます。
また、サブバッテリー以外にポータブル電源の購入を検討している方向けには、単純に容量や出力に対するコストではサブバッテリー換装の方が割安で済む点はメリットと言えます。
今回換装した「LiTime 12V100Ah」バッテリーは5~6万円で購入可能ですが、容量1280Wh、定格出力1280Wは、ポータブル電源では12~15万円クラスの製品と同等です。
サブバッテリーの換装で使用するのであれば、充電器(今回は『NewEra SBC-004』\17600を使用)の交換も必要ですが、合わせても7~8万円で換装できるため、ポータブル電源の購入よりはコスト安と言えます。

ポータブル電源よりコストを抑えられる…というのは、換装を行ったのが冬だからかもしれません。温かな季節であれば車外での活動も増えるので、必然的に電源も持ち出したくなりますが、寒い冬は車内に籠るのでサブバッテリーで特に不便さはかんじないのかもしれません。
ただ、そうであっても、12~15万円クラスのポータブル電源同等の電源を車内に持つことができれば、暖かい季節に外へ持ち出すポータブル電源は容量・出力が小さめの軽量タイプ(=割安)のポータブル電源で済むのではないかと思います。
換装メリット⑦~DIYで換装できる

元々サブバッテリーシステムが組まれている場合…という注釈付きですが、電気素人の自分でもものの15~20分程度で換装することができたのも大きなメリットと感じます。
送料だとか、工賃だとか、事務手数料だとか、あまり支払いたくないコストですが、こうした交換作業だって馬鹿にならず、数万円は請求されてしまうんじゃないかと思います。
幸い、バッテリーのLiTimeも、充電器のNewEraも、相談や問い合わせに親身に回答してくれる良心的なメーカーだったこともあって、当初心配していたより「あっけなく」と感じるほどイージーな交換作業でした。

ブログとしても、素人のわたしが比較的簡単にDIYで換装できた…という記事は、あまり知識や経験がないけどサブバッテリーを交換したいと考えている読者の方にも参考になるのではないか…という思いもありました。「コイツにできたんだから自分でもやってみよう」というカタチで後押しになればと思います。
換装メリット⑧~軽量化

「軽量化」これは換装前には想定していなかったメリットで、しかも、最も大きなメリットと言えるかもしれません。
換装後、普段使いの中でも『身が軽くなった』ことは実感していましたが、箱根神社・九頭竜神社に初詣に出かけた際に、これまで3rdでは登り切れずに2ndを多用していた箱根新道を、3rdだけで登り切れて「軽量化」の恩恵の大きさに驚かされました。
元々搭載されていたディープサイクルバッテリーの重量は30.5kgでした。乾燥後のLiTimeバッテリーは11.5kgで、19kgの減量となっています。
約20kgの減量というと、高性能車などではかなり大きなアピールポイントとなります。例えば…
この記事の「BMW M3 CS」は、3.0リッター直列6気筒Mツインパワーターボ・エンジンを搭載し、最高出力557PS(405kW)を絞り出すそうですが、1馬力あたり0.036kgの軽量化となります。
対するS412アルトピアーノは、直列4気筒「3SZ-VE」エンジンで97PS(71kW)を発生しますので、1馬力あたり0.21kgも軽量化されていることになるので、正直、普段使いの中でもはっきりとパワー感が増し、加速が軽快になったことが感じられます。

もちろん車中泊や車内飲食の際に従来より多い電力を簡単に取り出せて充電管理もしやすくバッテリー残量への注意もさほどシビアでないことは大きなメリットですが、買い物や家族の送迎などの普段使いの中で、エンジン性能がアップしたかのような軽快さは、より身近に最も顕著に感じられるメリットではないか…と感じます。
このことは、助手席にいる奥さんにもわかるようで、「今まで上り坂で苦しそうだったけど、すいすい上がっている感じ」と言っていました。
これだけ軽快感が増していれば、燃費にも影響するだろうと思いますが、まだ走行が少なく燃費好転は実感できていません。楽しみです。

「Li Time」公式サイトにて本記事が紹介掲載されました。
➡ https://jp.litime.com/pages/youtube-blog
走行充電器はNewEra SBC-004で大丈夫なのか

アルトピアーノのサブバッテリーの走行充電器はNewEra「SBC001B」が採用されていましたが、電池をLiTime製リン酸鉄リチウムに換装した場合、昇圧機能がないため電圧不足で必要量の充電ができないとのことで、走行充電器をセットで交換する必要がありました。
候補としてピックアップしたのは、現状と同じメーカーの「SBC-004」と、LiTimeから推奨された別メーカーの走行充電器でした。しかし推奨品はAmzonなどでの評価が悪く、特に耐久性の面でトラブルが起きているように書かれていたので、できれば「SBC-004」を使いたいと思いました。
使用可能かどうかの判断のためAmazonのカスタマーQ&Aなどと見ると、SBC-004をリチウムイオン電池に使用することについては、OKとする回答もあれば、「SBC-004は鉛電池以外はNG」との回答もあり、自分としても判断がつきかねました。
そこで、NewEra公式サイトから、使用する電池のメーカーや型番を付記して問い合わせメールを投げてみたところ、わざわざ電話で折り返してくれて、話を伺うことができました。
曰く『メーカーとして正式にテストしたバッテリーではないので公式にはOKとは言えないが…』としたうえで、『満充電できない可能性が高いが使えないことはないと思う。70~80%程度の充電量になってしまう可能性があるがそれで良ければ…』との言葉を聞けました。
もし、SBC-004を使用することにメーカーとして不安があれば、上記のような発言はしなしでしょうし、もし危険性などがあればそう言葉にするはずです。何も言わなければ電話口のユーザー(自分)はLiTime製のリン酸鉄リチウムイオン電池に「SBC-00」を使うのは目に見えているのですから、メーカーとして見過ごしにすることはできないはず。
『満充電にならないと使える電力は少なくなるが、満充電を嫌う(劣化する)リチウムイオン電池の性格からすれば、満充電に至らないことはバッテリーを保護することにもなるので…』という判断で、走行充電器はNewEra「SBC-004」に決めました。
実際にSBC-004を使用

では、リン酸鉄リチウムイオンバッテリーにSBC-004を組み合わせて使った結果どうだったのか。
換装後、すでに3週間以上が経過していますが、まったく問題ありません。
懸念された「フル充電できないだろう」という点については、走行後には13.5Vを表示することはありますが、少し間を置くと13.4Vに落ち着きます。
容 量 | 電 圧 |
100% | 13.5V |
99% | 13.4V |
90% | 13.3V |
70% | 13.2V |
40% | 13.1V |
30% | 13.0V |
20% | 12.9V |
10% | 12.8V |
1% | 10.8V(※) |
0% | 9.5V |
こちらは、LiTimeバッテリーの取説に記載されている電圧表示と充電残量ですが、13.4Vは充電量99%に相当するとのことですので、ほぼフル充電できていることになります。70~80%程度の可能性を指摘されていましたが、実際には99%まで充電できており、実用上で問題はありません。
逆に1%残して充電するなら、それはバッテリーにとって優しいことにもなりそうです。
サブバッテリーをリン酸鉄リチウム化すべき理由 まとめ
ここまで見てきたように、サブバッテリーのリン酸鉄リチウム化には多くのメリットがありました。
(1)鉛電池→リチウムイオン電池化によるメリット
使用電力量の増加、充電管理の容易さ、大消費電力家電が使える
(2)リン酸鉄リチウムイオン電池化によるメリット
安定性安全性の向上、長寿命
(3)その他のメリット
コスト、換装が容易(DIY可)、軽量化、適用温度の広さ
これまで、アルトピアーノには大なり小なり様々に改造してきましたし、その効果がしっかり体感できたことも少なくありませんでしたが、今回のサブバッテリー換装は、これまでで最も効果が体感しやすく使い勝手の向上ぶりは半端でないです。
また、車内温度は非常に高温になりますが、LiTimeバッテリーの充電温度は0℃~50℃、放電温度は-20℃~60℃と適用温度が広いので、バンコン、キャンピングカー向きかな…と感じます。
サブバッテリー購入から2~3年経過している場合には、リン酸鉄リチウム化を検討されてみてはいかがでしょう。
それでは今日はこの辺で。
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【12V100Ah】
12V100Ahのリン酸鉄リチウムイオンバッテリー。公称電圧12.8Vなので容量は1280Whとなります。筆者のアルトピアーノのサブバッテリー交換したのはこの製品です。
【限定クーポン「KAZ4」で+4%OFF】

nobさん
ご指導だなんてやめてください^^;自分が勝手にしたことをお話ししただけですので。
>とりあえず設置完了しました。
それはおめでとうございます。お疲れさまでした。
なにかのお役に立てたのなら嬉しいです^^
走行充電、成功をお祈りします!
nobです。
ご指導ありがとうございます!
とりあえず設置完了しました。こちらの記事のおかげですんなり安心してできました、感謝いたします。
明日は雪らしいので、また後日走行充電を確認してみます。
こんにちわ>nobさん
ご訪問&コメントありがとうございます。
日ごろからご覧いただいているとのこと、ありがとうございます。
『tempと書かれて黒いケーブル』ですね。ありますね。
バッテリーの温度を測るセンサーだと思うんですが、わたしはヘラをテコにして引っぺがしてしまいました。
両面テープで貼り付けてあるだけのようでしたので特に問題なく、そのまま新しいバッテリーの同じ位置にはりつけてあります。
あくまで素人なのでその辺りはご理解の上、自己責任でお願いいたします。
以上よろしくお願いいたします。
KAZ様
いつも参考にさせていただいたます。
nobと申します。
私もひとつ前世代のアルトピアーノを、中古で購入したのですが、サブバッテリーと1500インバーターの使い悪さに悩んでいたところ、こちらの記事に辿り着きました。
私も同じようにバッテリーと充電器の入れ替えにチャレンジしてるのですが、旧バッテリーの側面にtempと書かれて黒いケーブルがひとつ貼り付けてあります。
これは無理矢理剥がしてしまっても問題ないのでしょうか?